2025年までの10年間で全国の海水浴場が1割以上減少したことが、日本観光振興協会の調査で明らかになった。レジャーの多様化に加え、人手不足や物価高騰が追い打ちをかけ、酷暑などの自然環境の変化も影響している。7月20日の「海の日」を前に、海水浴場側は利用客の呼び戻しに向けた工夫を模索している。
淡輪海水浴場、今夏の開設見送り
大阪府岬町の淡輪海水浴場は、今夏の開設を見送った。1904年開業の歴史ある海水浴場で、2016年には10万1000人の利用客があったが、2025年には3万3000人に減少。安全監視や駐車場管理のスタッフ20人の確保が難航し、物価高も直撃。脱衣施設の設置・撤去費用や人件費がかさみ、年数百万円の赤字が続いていた。
淡輪漁協の福本勝也代表理事組合長は「客離れが激しく、赤字が膨らむばかりだった。もう運営を続けるのは無理だと思う」と打ち明けた。地元経済への影響も懸念され、旅館「夕陽の宿龍宮館」の女将(85)は「宿泊者には海水浴客もいるので、開設された方がよかった」と残念がった。
全国で海水浴場13%減少、酷暑が追い打ち
日本観光振興協会の調べでは、国内の海水浴場は2016年に1111か所あったが、2025年には13%減の966か所となった。気象庁によると、2025年夏(6~8月)の平均気温は過去30年の平均値を2.36度上回り、1898年の統計開始以降で最も高かった。自治体からは「近年の猛暑で外出を控える市民が増えたことも『海水浴離れ』の一因」との見方も出ている。
大阪府内では4か所の海水浴場のうち、箱作海水浴場(阪南市)も今夏の開設を取りやめた。利用客はピーク時(1990年)の20万3000人から10分の1に減少し、人手確保が難しくなったためだ。
環境変化による砂浜浸食や漂着物
海の環境変化が原因のケースもある。茨城県鉾田市の大竹海岸鉾田海水浴場は、砂浜の浸食で安全確保が難しくなり、今夏の開設を取りやめた。2025年に大量の砂を搬入したが、1年で流された。県河川課によると、温暖化による海水面上昇で波の影響が強まり、砂浜が失われていることが一因で、抜本的な対策を検討中だ。
宮城県石巻市の渡波海水浴場では、2024年からカキ殻などが大量に漂着し、3年連続で開設を見送った。2026年6月には数百人で殻を拾い一時的にきれいになったが、1か月で元に戻った。市観光政策課の担当者は「抜本的な解決策は見えていない。今後は地域の意見を聞いて検討する」と話す。
集客に成功する海水浴場の工夫
一方、集客に工夫を凝らす海水浴場もある。鳥取県米子市の皆生温泉海遊ビーチには、2025年に近年最多の昼夜で9万3000人が訪れた。7~8月の夜に宝探しイベントや花火の打ち上げを開催。市観光協会の石倉准次郎事務局長は「昔は何もしないでも客は来たが、今は工夫が必要だ。『遊び倒す』夜間や通年のイベントに力を入れたい」と意欲を示す。
須磨海水浴場(神戸市須磨区)は快適な利用に注力。2011年から入れ墨の露出や指定場所以外での喫煙を禁止。2024年からは禁止区域に水上バイクやプレジャーボートが進入した場合に条例で罰金を科している。7月19日も多くの海水浴客でにぎわった。
東日本大震災の影響で閉鎖が続いた請戸海水浴場(福島県浪江町)は、2026年8月に16年ぶりの海開きを予定。震災後は石や木材が流れ着いたが、住民の清掃活動や2024年からのグルメイベントを経て実現した。町観光移住課の佐藤貴徳課長は「念願かなってようやく海開きができてうれしい。多くの人の訪問を期待したい」と話す。
専門家「地域の海の価値提示を」
海のレジャーに詳しい東京海洋大学の中原尚知教授は「景色を見たり、魚を食べたり、人々が海に行く理由は海水浴以外にも様々ある。運営側は立地や自然資源を生かし、各地域の海の価値を提示することが必要だ。夏だけにこだわらず、通年利用を促す工夫などにより、海辺がにぎわいを取り戻す余地は十分にあるだろう」と指摘している。



