満腹でござる倫太郎食日記第56回:煮穴子の謝礼と財布取り戻し
満腹でござる倫太郎食日記第56回:煮穴子の謝礼

「さ、細かな届けが必要になるから、早く行かねば。皆に帰られてしまうと明日、出直すことになる。私は明日でも構わぬが、坂上どのは住まいもわからぬのでは困るからな。さ、急ごう」

倫太郎は雄馬に申し訳ないと詫びながら、小走りになった。が、ふと足を止めた。

急ぐ途中で立ち止まる倫太郎

「どうした? 急ぐぞ」雄馬が振り返った。

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「すまぬ。どうしてもあの小童どもに腹が立つ。財布を取り返す」

「待て待て。今更行ったところで、取り戻すことなど出来ないぞ。もう食い物に化けてすっかり腹の中だ」やめとけ、やめとけ、と雄馬がため息まじりにいった。

「いいや。だったら、おれの腹はどうなる。あの銭でしばらく賄うつもりであったのだ」

そういうと倫太郎は身を翻し、駆け出した。が、再び急に歩を止めて、雄馬の前に戻った。雄馬が訝しげな顔をする。

煮穴子の謝礼を差し出す

倫太郎は背負った荷から、風呂敷で包まれた物を取り出した。

「煮穴子だ。うちの母は食い物に毒は入れんから安心しろ。江戸屋敷まで案内してくれた礼だ」

さあ、と倫太郎が差し出すと、「いらん」手をかざし、あっさり雄馬が返してきた。

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