NHK夜ドラで注目のラジオ「臨時災害放送局」の実態と課題
NHK夜ドラで注目のラジオ「臨時災害放送局」とは

政治・経済・投資 NHK夜ドラで注目のラジオ「臨時災害放送局」とは?

ラジオへの関心が高まる一方で、20代のラジオ保有率はわずか5.6%という課題が浮き彫りになっている。本記事では、臨時災害放送局の実態と普及に向けた取り組みを紹介する。

千葉県成田市のラジオ成田で番組制作中

筆者は2025年、ラジオ成田と台湾のRti台湾国際放送の共同番組を作成した。その過程で、福島県南相馬市が運営した「ひばりFM」でチーフディレクターを務めた今野聡氏を取材し、貴重な体験を伺った。

東日本大震災と原発事故直後の臨時災害放送局

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の直後、市民の9割近くが市外へ避難する中で、この臨時災害放送局は設置された。放送エリアは同市内に限られていた。当初の番組内容は支援物資配布案内などの実益情報がメインで、県域放送よりも詳細なローカル情報を細かく発信できるメリットがあったと今野氏は振り返る。

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福島県南相馬市「ひばりFM」の経験

今野さんには忘れられない出来事がある。開局1年目、スタジオを高齢の男性が訪ねてきた。第1原発20キロメートル圏内であり、警戒区域となった同市小高区からの避難者だった。「自分の生まれ育った『小高』の名前をラジオでも使ってほしい」。当時は立ち入りすらできず、番組でも情報が伝えられぬ時期だったが、せめて故郷の名前だけでも聞きたいという悲痛な叫びだった。

放送が続くにつれ、住民の声を発信するようになった。特に当時市内で少なかった若い世代の声を届けるなど、住民参加の番組が増えていった。ある年の暮れには、インタビューした小中学生たちの声を放送した。クリスマスに欲しいものを話す幼い声は、仮設住宅に身を寄せる高齢者たちを喜ばせた。子どもたちや町の人たちの声が聴けることで「安心した」との声もあった。ラジオ局は7年の歴史の中で、住民の心の支えにもなっていた。

臨時災害放送局の運営課題

制度上、臨時災害放送局は地方自治体が運営する。しかし、いざラジオ局を開設するのは難しい。運営に必要な第二級陸上無線技術士以上の国家資格保有者をはじめ、専門家たちの協力が不可欠となる。

2015年に茨城県常総市で集中豪雨に伴う災害が発生した際は、水戸市のコミュニティFM「FMぱるるん」が常総市に申し出て、出力50ワットの臨時災害局を即座に開設した。同局では東日本大震災の際のノウハウを生かして、英語、ポルトガル語、スペイン語などの多言語で情報を伝えた。

開設当初はアンテナの問題で想定地域に十分に電波が行き届かない事態が生じたが、アマチュア無線に精通したメンバーが多くいたため、伝搬のよい設置場所を見つけて解決することができた。ノウハウ、多言語、電波や放送に精通したネットワークを構築するのは一朝一夕では難しく、災害後に準備するのは至難の業だ。そのため、平時から地域でのフェイズフリーの準備が必要だろう。

どうラジオを普及させるか

ラジオの普及には、特に若い世代へのアプローチが急務である。20代のラジオ保有率は5.6%と低く、災害時の情報伝達手段としての役割を果たすためには、日常的なラジオ聴取習慣の促進が不可欠だ。コミュニティFMの活性化や、スマートフォンアプリとの連携など、新しい形でのラジオ体験を提供することが求められている。

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