大阪市生野区の住宅街の一角に、ベージュ色の建物がある。月に一度だけ開かれる子ども食堂「カンクリキッズキッチン」だ。7回目となる2026年7月18日、オープン前から小学生と保護者ら約40人が集まり、午前11時にはすぐに満席となった。明るいK-POPの曲が流れる中、中華だしのスープとニンニクのきいた麻婆豆腐丼を食べる子どもたちの笑い声が響いた。訪れた小学生は約70人に上り、友だちや保護者と会話しながら食事を楽しんだ。
事件現場を再生、特殊清掃業者の挑戦
この建物では2021年、3階建ての2階部分で強盗殺人事件が発生。大きく報道され、ネットで調べればすぐに赤茶色の外観が表示されるほど、暗い記憶が根づいていた。価値の付かない建物として借り手も現れず、空き家状態が続いていた。
運営するのは、人が亡くなった部屋やごみ屋敷の清掃を担う「関西クリーンサービス」。同社はこれまでも本業の傍ら、忌避されやすい「事故物件」を買い取り、改装して賃貸に出してきた実績がある。今年1月、この建物を買い取り、全面的に改装。殺人事件の現場を、地域の子どもたちが集う食堂へと生まれ変わらせた。
地域をつなぐ存在に
亀沢範行社長も子ども食堂のスタッフとして運営に参加している。「特殊清掃の現場は、多くの場合、悲しみや孤独が漂う場所です。しかし、その場所を子どもたちの笑い声で満たすことで、地域に新たな価値を生み出したい」と語る。この取り組みは、事件の暗い記憶を払拭し、地域コミュニティの交流拠点として機能している。
食事は無料で提供され、地域住民やボランティアの協力で運営されている。子どもたちは手を合わせて「いただきます」と言い、笑顔で食事を楽しんだ。保護者からは「安全な場所で子どもが食事できるのがありがたい」との声が聞かれた。
事故物件再生の新たなモデル
関西クリーンサービスは、事故物件を単に清掃するだけでなく、地域に開かれた場として再生する試みを続けている。今回の子ども食堂はその一環であり、特殊清掃業界の新たな役割を示す事例として注目される。亀沢社長は「今後も同様の取り組みを広げていきたい」と展望を語った。
子ども食堂は毎月第3土曜日に開催される。地域の子どもたちにとって、殺人現場だった場所が笑い声あふれる居場所へと変わったことは、大きな意味を持つ。この取り組みは、事故物件の有効活用と地域再生のモデルケースとして、他の地域からも関心を集めている。



