北海道・大雪山の黒岳(1984メートル)で、50代の男性が妻とともに下山中に足首を骨折する事故が発生した。標高1890メートルにある避難小屋「黒岳石室」の管理人・細田直之さんが、別の登山者からの知らせを受けて現場に駆け付けた。
男性は意識があり会話もできたが、足首はブラブラとした状態で自力での歩行は不可能だった。岩石がゴロゴロ転がるガレ場で足を滑らせたとみられる。細田さんは「『もうすぐだ』と思うと緊張の糸が切れちゃう。やっちゃうときは1秒なんです。疲れもあるし、荷物も重い。1秒前まで普通に歩いていたのに、次の瞬間には骨を折っている」と話す。
担架搬送の現実
黒岳石室は「北海道の屋根」と呼ばれる大雪山を縦走する登山者たちの重要な拠点だ。事故当日は大学生のグループが宿泊しており、細田さんが担架搬送の応援を頼むと10人以上が快く引き受けた。
しかし、山道での搬送は簡単ではない。火山ならではの地質でつまずきやすく滑りやすく、誰かがバランスを崩せば担架は大きく傾き、男性を危険にさらしかねない。さらに、どんどん暗くなり足元が見えにくくなる中での搬送となった。
油断と無理が招く遭難
細田さんは「あなたの命、飛行機のキャンセル代程度?」という言葉で、登山者の油断と無理が遭難を招く現実を警鐘を鳴らす。久しぶりの登山で宿泊用の荷物や食料を背負い、山頂からの下り坂を歩いていた男性は、山小屋まで残り数百メートルのところで事故に遭った。
このような下山中の転倒による負傷は珍しくないという。山で行動不能になると、周囲の登山者や管理人に大きな負担がかかる。楽しいはずの山行が一瞬で遭難に変わる現実を、現場の証言から伝える。



