西日本豪雨8年、濁流にのまれた神社の被害と復興を石碑に刻む
西日本豪雨8年、神社の被害と復興を石碑に刻む

2018年7月の西日本豪雨から8年。愛媛県西予市野村町の榊森三嶋神社の境内に、濁流にのまれた神社の被害と、地域の復興に尽力した人々の記憶を刻んだ石碑が建てられている。この石碑は国土地理院が登録する「自然災害伝承碑」の一つで、同院が2019年から地図記号化を進め、全国で2451基が登録されている。

石碑に刻まれた濁流の爪痕

石碑は縦約120センチ、横約80センチ、厚さ約15センチ。表面には「平成三十年文月西日本豪雨災害」の文字と、神社再建に尽力した宇都宮大朗さんの名が大きく彫られている。裏面には、当時の被害状況が詳細に刻まれている。「社殿(本殿大床上30センチ・境内から3メートル90センチ)神輿蔵(水没)手水舎・社務所(流失)氏子においても700戸近くの家屋が浸水」。神社はほとんどが濁流にのまれ、拝殿は柱と屋根だけが残り、社務所は跡形もなく、石灯籠は倒れてひびが入る悲惨な状態だった。

宮司の和氣利雄さん(74)は当時を振り返り、「お宮がつかっていた。川の中に鳥居と屋根だけが見えた」と語る。水が引いた後、ぼう然とし、「再建には何十年もかかるだろう」と思ったという。

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地域の心の支えとなった再建

被災の翌月、近くに住む内科医の宇都宮大朗さんが約1500万円を寄付すると申し出た。神社の再建が地域の復興における心の支えになるとの思いからだった。全国から来たボランティアらの助けもあり、2018年10月には再建が完了。和氣さんは「宇都宮さんの行動、そして水害の記録を地域に残したい」と石碑の設置を決め、2019年3月に除幕式を行った。その約1週間後、宇都宮さんは病で亡くなった。

和氣さんは被災する以前、「祖父から過去の水害については聞いていたが、ダムが出来てからは大丈夫だろうと思っていた」と振り返る。「日頃の避難訓練だけでなく、薄れゆく記憶をつなげることも重要。現地を実際に見て、被害を想像することでよりリアルに受け止めることができると思う」とし、石碑がそのきっかけになることを期待する。境内には過去の水害被害を記す掲示も立て、「将来はQRコードも掲示に追加して、被災時の様子を動画でより分かりやすく伝えたい」という。

国土地理院の取り組み

国土地理院は2019年から自然災害伝承碑の地図記号を作成し、全国の伝承碑の所在地や伝承内容、建立年などをホームページで公開。未登録の碑についても、市区町村を通じて情報提供を呼びかけている。同院は「伝承碑を地図に記すことで、過去の自然災害の教訓を踏まえた被害の軽減を目指す」としている。

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