明倫商店街火災1か月、全焼の大黒鮓店主「残念や」…がれき撤去に課題
明倫商店街火災1か月、全焼の大黒鮓店主「残念や」…がれき撤去に課題

三重県伊勢市岩渕の明倫商店街で8月31日に発生した大規模火災は、30日で発生から1か月を迎えた。全焼した店舗の男性が読売新聞の取材に応じ、苦しい胸の内を語った。商店街は「市の玄関口」の近鉄宇治山田駅前にあり、全焼した建物の解体やがれきの撤去が被災者と行政の大きな課題となっている。

約65年守った店、全焼「こんな形で終わるのは残念や」

明倫商店街で約65年間、飲食店「大黒鮓(だいこくずし)」を営んできた出口宜知加(よしちか)さん(85)は、火災が起きた8月31日、長男の雅浩さん(56)の前で唇をかんだ。鉄骨3階建ての店舗兼住宅は全焼だった。

店では「天ぷら伊勢うどん」と「手こねすし」が人気で、この二つにサザエのつぼ焼きを加えた「伊勢志摩づくし」が観光客に好評だった。正月の伊勢参りの後に毎年足を運んでくれる人もおり、来店客の笑顔が出口さんの生きがいになっていた。

日頃から店を手伝ってくれた雅浩さんは食品メーカーで働いており、店は自分の代までと決めていた。2人は「次の式年遷宮(2033年)までやれたらええな」と、たびたび話していたという。

全焼した建物の解体・がれき撤去、費用負担が難航

全焼した店の2階と3階は、家族5人が暮らす住居で、焼け出された今は市営住宅に身を寄せている。市が原則3か月間、家賃などを免除し、生活必需品も無償で貸し出してくれた。雅浩さんは「おかげで先のことを考える時間ができた」と市の対応に感謝する。

今後、早急に取り組みたいと考えているのは、店舗兼住宅の解体とがれきの撤去だ。火災保険を確認すると、撤去費用は保険の対象に含まれていた。

「火災が起きてしまった限り、うつむいてばかりいても仕方がない。うちの店舗は商店街の入り口にあるので、早くがれきを撤去しないとほかの店に迷惑をかける」

雅浩さんは店の継続を諦めざるを得ない父の悔しい思いを受け止めながらも、そう言って前を向いた。

市道早期復旧へ国・県に相談、義援金の第1次配分も

伊勢市の集計によると、明倫商店街の火災では、商店街と周辺の建物計60棟が焼損し、うち53棟が全焼。焼失面積は4300平方メートルに上る。商店街内を通る市道などには大量のがれきが残されたままで、撤去の見通しは立っていない。

全焼した建物の解体やがれきの撤去などの費用は所有者の負担が原則だ。しかし、市道に焼け落ちたがれきは、どの建物の一部か分からないケースもある。全焼した建物の約半数は空き店舗で、誰が費用を負担するのか定まらない可能性もあり、がれきの撤去は難航が予想される。

商店街は、伊勢神宮を訪れる皇族も利用する近鉄宇治山田駅前に位置し、市は「景観上の問題もある」として、行政としてどういう対応ができるか検討を重ねている。

被災者からは「がれきに埋もれた市道を通行できるようにしてほしい」「アーケードだけでも公費で撤去してもらいたい」などの声が上がる。市によると、私有財産であるがれきの撤去に税金を投入することに幅広い理解が得られるのかなど、「法的なハードルも含めてクリアすべき課題は多い」という。

市はがれきの撤去に億単位の経費が必要とみており、30日に報道陣の取材に応じた鈴木健一市長は「災害救助法の適用も含め、国と県に何らかの支援が確保できないか相談している」と説明。市道を覆うがれきについては「できるだけ早急に(通行できるよう)進めていきたい」と述べた。

伊勢市は30日、被災者に寄せられた義援金の第1次配分について発表した。9月29日までに受け付けた義援金は計約1700万円で、うち832万円を配分する。所有する住宅や店舗が全半焼した世帯と事業者に20万円、住宅や店舗の貸主と借り主、空き家の所有者に10万円を支給する。