山口県平生町で6月26日夜に発生した土砂崩れにより、70歳代の男性が死亡した。この際、高齢者に避難を促す「土砂災害警報」(レベル3)が発表されていなかったことが、気象庁への取材で分かった。気象庁によると、5月に発表の運用を変更したことで、従来よりも警報が出にくくなっているという。山口県は気象庁とともに、警報の判断基準について修正するかどうかを検討する方針だ。
気象庁の運用変更の内容
気象庁によると、土砂災害に関する警報はこれまで、土壌の水分量が一定の基準を超えた場合に、高齢者などに事前避難を促すレベル3の「警報」を発表していた。しかし、5月の運用変更後は、全員が避難するレベル4の「土砂災害危険警報」に達すると予想された場合にのみ、レベル4の基準に到達する3時間前に「警報」を発表する方式に改められた。
この変更には、レベル4にまで達しない警報の数を減らす狙いがある。気象庁は「警報が頻発すると、本当に危険な状況でも『どうせ危険ではない』と避難してもらえない懸念があった」と説明している。実際、2023年6~9月に全国で発表されたレベル4に至らなかった警報(1616件)にこの新しい運用を適用すると、警報の数は約2割まで減少すると試算されている。
専門家の懸念
しかし、関西大学の小山倫史教授(地盤災害工学)は、この変更に対して懸念を示す。「短期間の激しい雨は予測が難しく、必要な警報が出ない恐れがある。注意報から一足飛びに特別警報になる可能性も高まり、高齢者の避難が遅れかねない」と指摘する。
今回の平生町の事例では、6月24日からの72時間雨量が、近くの周防大島町で399.5ミリに達し、6月の観測史上最大を記録した。下関地方気象台は、6月25日に周防大島町に対して土砂災害危険警報(レベル4)を発表したが、平生町は基準に達せず、レベル2の「注意報」にとどまった。同気象台の担当者は「記録的な雨量から考えると、変更前であれば警報を出した可能性がある」と説明している。
今後の対応
レベル4の判断基準は、県と気象庁などが協議して策定している。今年は定期的な基準見直しの年に当たっており、県は気象庁の運用変更による警報数の減少影響を分析し、対応を検討する。また、実際に避難を呼びかける市町とも意見交換を行う予定だ。
山口大学の山本晴彦名誉教授(環境防災学)は「空振りしてでもレベル3を出すべきか、頻度を減らして空振りを少なくするかは難しい課題だ。データを蓄積し、修正すべき点は変える必要がある」と述べている。



