全国初の摘発、大阪市と静岡市で相次ぐ
大阪市内の路上でハトやカラスに餌を与えていた人物が今年4月、動物愛護法違反容疑で全国で初めて書類送検された。続いて5月には静岡市でも同様の行為が摘発された。いずれも自治体が繰り返し指導や中止命令を行った後、刑事告発に踏み切ったケースだ。餌やりを巡るトラブルは全国各地で発生しており、今回の動きは他の自治体にとっても一つの指針となる可能性がある。
大阪市住吉区の事例:10年以上続いた問題
問題が起きたのは大阪市住吉区のJR我孫子町駅前。2026年6月中旬に訪れた際には、「ハトにえさをあたえないでください」と書かれた看板が空き地を囲う柵に掲げられていた。市によると、周辺では十数年前から餌を与える人物がおり、数百羽ものハトが集結。フンや悪臭が深刻な問題となり、フンを介した感染症のリスクも懸念された。また、カラスが大声で鳴くことへの苦情も寄せられていた。近くに住む60代女性は「以前はベランダの洗濯物がフンだらけになった。今はましになった」と話す。
動物愛護法の改正と摘発の流れ
動物愛護法には餌やり自体を禁止する条文はない。しかし、全国で多頭飼育や餌やりを巡るトラブルが相次いだことを受け、環境省は2019年に同法を改正。周囲の生活環境を悪化させた場合、自治体が指導や勧告、中止命令を出せるようになり、従わなければ刑事告発が可能で、50万円以下の罰金が科される。
JR我孫子町駅周辺では法改正後も毎年数十件以上の苦情が続き、市職員が巡回して餌やりをする人物を特定。指導や勧告を計9回繰り返した上で、2024年4月に全国で初めて中止命令を出した。しかし餌やりは止まらず、市は同年12月に刑事告発。大阪府警住吉署が2026年4月30日、動物愛護法違反容疑でこの人物を書類送検した。容疑は認められており、今後大阪地検が刑事処分を判断する。
静岡市の事例:中止命令に従わず
静岡市では2026年5月、カラスへの餌やりをやめるよう中止命令を受けていた女性が同容疑で静岡県警に書類送検された。市によると、女性はドッグフードを与えていた。2024年以降、計8回の指導や勧告に応じず、中止命令にも従わなかったため、市が刑事告発に踏み切った。
専門家の見解:モデルケースとしての意義
動物愛護法に詳しい平成国際大学の牧野高志教授(民法・ペット法)は「相次ぐ摘発は、悪質な餌やりへの抑制につながる可能性がある。同じ問題を抱える他自治体のモデルケースとなるだろう」と語る。
餌やりがもたらす生態系への影響
市街地で見かけるハトは「ドバト」と呼ばれ、本来は樹木の種子や芽を食べる。餌に依存すると自ら食料を探す能力が低下する。また、繁殖力が高く、餌を与えて栄養状態が良くなると2か月に1回の繁殖を繰り返し、数が増えすぎる可能性もある。大阪市生活衛生課の担当者は「餌をやらなくても十分生きていける。優しく見守って」と話す。
依存する人への対策も必要
動物と人間の関係性に詳しい帝京科学大学の加隈良枝准教授(動物福祉学)によると、餌やりをやめられない人の中には「自分がいなければ、動物がどうなってしまうのか」と餌やりを自身の存在意義にしてしまうケースがあるという。加隈准教授は「動物は餌やりに応えてくれることが多く、受容されている感覚を得られ、依存性がある。そうした人を孤立させずに地域猫活動などに巻き込む取り組みも必要だ。動物の嫌がる音が鳴る仕組みなど、来なくなるための対策も求められる」と指摘する。



