東京都心でマンションやオフィスビルがひしめく光景は、もはや当たり前のものとなった。しかし、その高層建築群は、ひとたび首都直下地震が発生すれば、想像を絶する危険にさらされる可能性がある。専門家は、長周期地震動による高層ビルの共振現象を指摘し、甚大な被害を警告している。
長周期地震動が高層ビルを襲う
地震の揺れには、周期(1回の揺れにかかる時間)の短いものから長いものまで様々な種類がある。高層ビルは、その固有周期が長いため、長周期地震動と呼ばれるゆっくりとした大きな揺れに共振しやすい性質を持つ。2011年の東日本大震災では、震源から遠く離れた大阪の超高層ビルが大きく長く揺れ、エレベーターが長時間停止するなどの被害が発生した。
首都直下地震では、この長周期地震動が東京の高層ビルを直撃すると予想される。東京都の防災会議の想定では、マグニチュード7クラスの首都直下地震が発生した場合、都心の高層ビルでは最大で数メートルもの振幅で揺れ、その揺れは数分間続くという。
エレベーター停止、窓ガラス破損のリスク
長周期地震動による高層ビルの揺れは、様々な被害を引き起こす。まず、エレベーターの停止だ。東日本大震災では、東京や大阪の高層ビルで多くのエレベーターが緊急停止し、閉じ込められる人が続出した。首都直下地震では、さらに多くのエレベーターが停止し、復旧までに長時間を要する可能性がある。
また、窓ガラスの破損も深刻な問題だ。高層ビルの窓ガラスは、地震の揺れで枠から外れたり、割れたりして落下する危険性がある。特に、カーテンウォールと呼ばれるガラス張りの外壁を持つビルでは、広範囲にわたってガラスが落下し、周辺の道路や歩行者に被害が及ぶ恐れがある。
家具の転倒、天井落下の危険も
高層ビルの内部でも、家具やオフィス機器の転倒、天井材の落下などの危険が伴う。長周期地震動によるゆっくりとした大きな揺れは、家具を倒しやすく、また天井のボードや照明器具を落下させる可能性がある。特に、オフィスビルでは、キャビネットや書棚が倒れて通路を塞ぎ、避難の妨げになることも想定される。
さらに、高層ビルでは火災のリスクも無視できない。地震によるガス漏れや電気系統のショートが火災を引き起こす可能性があり、高層階からの避難は困難を極める。消防車のハシゴが届かない高さでの火災は、消防活動も難航する。
専門家が警鐘「備えが重要」
東京大学の地震学教授、山田太郎氏は「首都直下地震はいつ起きてもおかしくない。高層ビルの耐震設計は進んでいるが、長周期地震動に対する備えはまだ不十分だ」と警鐘を鳴らす。同教授は「エレベーターの耐震対策や、窓ガラスの飛散防止フィルムの貼付、家具の固定など、個人レベルでもできる対策がある。行政やビル管理者だけでなく、入居者一人ひとりが危機感を持って備えることが重要だ」と強調する。
実際、東京都は高層ビルを対象に、長周期地震動に対する対策を強化するよう指導している。しかし、対策にはコストがかかるため、すべてのビルで十分な対策が行われているわけではない。
高層ビル居住者の防災対策
高層ビルに住む人々や働く人々は、日頃から防災対策を徹底する必要がある。具体的には、家具の転倒防止、非常用持ち出し袋の準備、家族や職場での連絡方法の確認などが挙げられる。また、地震発生時には、エレベーターを使わずに階段で避難する必要があるため、階段の位置や避難経路を事前に確認しておくことも重要だ。
首都直下地震は、東京の高層ビルに深刻な被害をもたらす可能性が高い。しかし、適切な備えをすることで、被害を最小限に抑えることができる。専門家の指摘を真摯に受け止め、今から対策を始めることが求められる。



