夏の風物詩として親しまれる「よさこい」が、その自由なスタイルで国内外に広がりを見せている。戦後、高知県で誕生したこの祭りは、現在では国内外約300か所で開催されるまでに成長。踊り、音楽、衣装の自由度の高さが多くの人々を魅了し、海外34の国と地域にまで浸透している。
よさこいの起源とルール
「よさこい」の語源は諸説あり、「夜にいらっしゃい」を意味する「夜さ来い」や、高知城建設時の掛け声「ヨイショコイ」などが挙げられる。高知県内では古くから「よさこい節」が労働歌や生活歌として親しまれてきた。
よさこい祭りが始まったのは1954年。隣県・徳島の阿波おどりに対抗し、地元を盛り上げようと高知商工会議所が中心となって企画した。楽曲は愛媛県生まれで高知市に長く暮らした作曲家・武政英策氏(1907~82年)が「よさこい節」などを参考に制作。振り付けは日本舞踊家が考案し、阿波おどりの素手に対抗するため、農具だった「鳴子」を用いることとなった。こうして「よさこい鳴子踊り」が完成した。
自由な変化が生んだ多様性
高知大学の川竹大輔地方創生推進室長によると、当初はゆったりした盆踊り風だったが、ルールが〈1〉楽曲にオリジナルフレーズの一部を入れる〈2〉鳴子を鳴らして前進する――の2点のみで、変化に寛容だった。1972年にフランスの祭りに招待され、サンバ調にアレンジした楽曲を披露した頃から、正調からサンバ、ロックまで多様な音楽と独自の振り付け、華やかな衣装で楽しむ祭りへと進化した。「制約の少なさと進取の気風を好む県民性が、自由で活気あるよさこいを生んだ」と川竹氏は語る。
全国区への飛躍:YOSAKOIソーラン祭り
よさこいが全国に広がる契機となったのは、1992年に札幌市で始まった「YOSAKOIソーラン祭り」だ。北海道大学の学生らが地元民謡「ソーラン節」と融合させ、街中を練り歩くのではなく特設ステージでチームごとに演舞を披露するスタイルが好評を博した。
せとうち観光専門職短期大学の内田忠賢教授(地理学)は「バブル崩壊後、自治体や商工会が地域活性化に頭を悩ませていた時期に、民謡で郷土色を打ち出せ、大がかりな施設も不要なイベントとして注目された」と説明する。
全国各地で多彩な展開
高知よさこい情報交流館の2024年の調査によれば、国内の開催地は約250か所。コスプレ衣装が印象的な「瑞浪バサラカーニバル」(岐阜県瑞浪市)、大旗が特徴の「にっぽんど真ん中祭り」(名古屋市)、東北の民謡を取り入れた「仙台みちのくYOSAKOIまつり」(仙台市)など、地域色豊かな内容が特徴だ。同まつり実行委員会の糀谷知洋協賛部長は「東北のチームが集まる同窓会のような場として根付いている」と語る。
海外へ拡大、言葉を超える一体感
海外への広がりも顕著で、高知県によると英国、チェコ、マレーシアなど34の国と地域で踊られている。2025年にはカナダで「北米国際よさこい祭り―KOKUYOSA―」が初開催された。共同創設者の一人、田中恵美子さんは「鳴子を握れば、言葉が通じなくても一体になれる」とその魅力を語る。
未来への展望
後継者不足や物価高など、各地の祭りを取り巻く環境は厳しい。しかし内田教授は「自由度の高いよさこいは、伝統芸能のようなしがらみが少なく、若者が参加しやすい。時代に合わせて変化を続け、常に新しい祭りとして続くだろう」と展望を語る。よさこいは、その柔軟性と開放性で、未来へと躍動し続ける。



