豊島区を拠点に戦争体験者の証言を記録するNPO法人「『としまの記憶』をつなぐ会」が、活動開始から15年を迎えた。これまでに証言を得た区民は131人を超え、ホームページで公開している動画は379本に上る。体験者の生の声を届けるイベントも開催し、記憶の掘り起こしと発信を続けている。
15年の活動で131人の証言を収集
同会は2012年7月、フリーライターだった吉田いち子さん(72)ら約5人で設立した。豊島区が区制80周年を迎えた年に、区民の体験を聞き取りオンライン上に残す「記憶の遺産事業」が始まる際、吉田さんらに協力の打診があったことがきっかけだった。
吉田さんらは知人の伝手をたどって語り手を探し、立教大や大正大の学生と協力して体験談を収録。上映会やホームページで公開してきた。企画終了後も証言者探しを続け、現在までに131人が聞き取りに協力し、公開動画は379本となった。
被爆体験や空襲の記憶を記録
証言者の一人、区内に住む山田玲子さん(92)は、10歳の時に広島で被爆した体験を語った。学校で白い光に包まれて爆風に襲われ、一番上の姉は首や背中に大やけどを負った。道路には死傷者が折り重なっていたという。
山田さんは「自分の力では映像で残すことはできない。体験を記録に残し、次世代につなげてもらえてありがたい」と会の活動に感謝している。
字幕作業や平和展への協力も
会の活動は動画収録だけにとどまらない。戦争体験者と子供が対話する場を設け、聴覚障害者に伝えるための字幕入れ作業も進めている。戦後80年を迎えた昨年からは、区が8月に区役所で開く「平和展」に協力し、戦争体験者が区民の前で語る場を設けた。
城北大空襲の追悼会を毎年開催している地元有志には、当時の被害の大きさを解説する公開講座を開いてもらった。区総務課によると、平和展を開催した9日間で計約1000人が来場した。
高齢化への危機感と今後の呼びかけ
代表理事の吉田さんは手応えを感じる一方、証言してくれた区民の訃報に接したり、連絡が取れなくなったりすることが増えたことに危機感を抱く。会の運営を支える約60人の会員も高齢化が進んでいる。
吉田さんは「今という時を逃さないよう、一人でも多くの証言を残し、戦争を知らない世代に『平和とは何か』を考えてもらいたい。区民以外の人にも関心を持ってもらい、活動に協力してほしい」と呼びかけている。



