2026年5月にプレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3の第3位は、NHK連続テレビ小説『風、薫る』に登場する侯爵夫人・千佳子(仲間由紀恵)に関する記事だ。作中ではわがままなセレブ妻として描かれているが、そのモデルとなった実在の女性は、生涯をかけて日本に尽くした人物だった。
ドラマの中の千佳子:わがままな侯爵夫人
『風、薫る』は、明治時代に日本で初期の看護婦となった女性たちの奮闘を描く。看護婦学校の生徒・りん(見上愛)が実習で担当するのは、侯爵夫人の千佳子。彼女は乳がん手術のため入院してきたが、プライドが高く不機嫌で、りんに体温すら測らせない。VIP待遇を受けながらも、医師や看護婦に「病室の眺めが気に入らない」「出ていってちょうだい!」とヒステリックに叫ぶ。しかし、朝ドラの常套手段として、ツンデレな彼女がいつデレるのかと視聴者を楽しませる役割も担っている。
モデルとなった実在の人物:三宮八重野
この侯爵夫人のモチーフとなったのは、三宮八重野(1846~1919年)である。彼女は、明治時代に外交官・宮内省官僚として活躍した三宮義胤男爵(1844~1905年)の妻。大関和(ドラマのりんのモデル)が東京帝国大学附属病院で看護婦見習いをしていた際、乳がん手術で入院した八重野の付き添いを十日間務めた。村上信彦『近代史のおんな』(大和書房)によれば、大関は同期生の中でも優秀で、白羽の矢が立ったという。
史実の八重野:イギリス人女性の日本への貢献
八重野はイギリス人であり、日本で5例目の国際結婚をした人物でもある。彼女は夫・三宮義胤と共に日本に尽くし、英駐日公使の日記にも「とても魅力的で才気豊かな婦人」と記されている。夫は後に爵位を得たが、八重野自身も日本の近代化に貢献した。夫に先立たれた後は孤独な老後を送ったが、その功績は今も語り継がれている。
ドラマと史実のギャップ
ドラマでは千佳子はわがままに描かれるが、史実の八重野は国際結婚を通じて日本とイギリスの架け橋となり、看護教育の発展にも間接的に寄与した。帝大病院でのVIP待遇は、彼女の社会的地位だけでなく、その功績に対する敬意の表れでもあったのだ。



