若手社員の間で急拡大する新たな情報漏洩リスク
SNSアプリを通じた企業の内部情報流出リスクがかつてないほど高まっている。これまでフランス発の「BeReal」が注目されていたが、成蹊大学特別客員教授の高橋暁子氏は「10~20代の間で人気が急上昇している韓国発アプリ『setlog』のほうが、よりリスクが高い」と警鐘を鳴らす。
setlogとは何か――BeRealの不満を解消したアプリ
「8:00 おはよー、起きたー」「9:00 メイク完了! 行ってきまーす」「10:00 ○○と合流! ディズニーランド到着〜」――。ハッシュタグ「#setlog」でInstagramなどを検索すると、縦長の上下2分割または3分割画面の動画が多数ヒットする。これは起床から1時間ごとの様子を映した1日のVlogだ。お互いに撮り合い、自分側と相手からの視点両方が入るのが特徴で、若者を中心に人気を集めている。
setlogは、1時間ごとに2秒の動画をインカメラまたはアウトカメラで撮影し、共有することでその日のVlogを作成するアプリだ。最大12人のグループを作って限定公開し合う仕組みで、日常の共有やお出かけVlogの作成に使われる。BeRealと似ているが、BeRealの「通知から2分以内に撮影」という制限がなく、1時間ごとに好きなタイミングで撮影できる。また、自分が投稿しないと友達の投稿が見られないという縛りもなく、撮りたくない時間は黒い画面になる。
大学生の5割が利用、認知度は7割
setlogは2026年5月初頭からApp Storeの無料アプリランキング1位を占めていた。高橋氏が講師を務める成蹊大学の学生125名に実施したアンケート(2026年6月10日)では、「知っており、使っている」が50.4%、「知っているが使っていない」が21.6%、「使ったことがあるが、やめてしまった」が2.4%で、利用率は5割、認知度は7割に達した。「知らなかった」は23.2%で、流行したばかりであることがうかがえる。
学生からは「好きな時に撮れるから撮りたい動画が撮れていい」「お出かけVlogがいい記録になって楽しい」と評判は上々だ。
BeReal流出問題とsetlogのリスク
BeRealではこれまで、企業の内部情報が流出する事例が相次いだ。例えば、勤務中の社員がBeRealで撮影した画像に、顧客情報や社内文書が映り込んで外部に拡散されるケースが報告されている。setlogは1時間ごとに撮影するため、勤務中の様子を連続的に記録する可能性が高く、より深刻な情報漏洩を引き起こす恐れがある。
さらに高橋氏は「setlogの最大のリスクは、過去の投稿が消えないことだ」と指摘する。BeRealは24時間で投稿が消えるが、setlogは動画が保存され続けるため、就職後に学生時代の投稿が残り続け、過去の行動が勤務先に知られるリスクがある。また、グループ内で共有された動画が意図せず拡散される可能性も否定できない。
Z世代の常時接続文化がもたらす危険性
高橋氏は、Z世代が「常時つながり合うことで安心する」傾向にあると分析する。setlogのようなアプリは、その欲求を満たす一方で、企業の機密情報を無意識にさらす危険をはらむ。学生気分を捨てきれない若手社員が、業務中に日常を記録し続けることで、組織全体のセキュリティが脅かされる可能性がある。
企業は、setlogを含むSNSアプリの利用に関するガイドラインを策定し、若手社員への教育を徹底する必要がある。高橋氏は「若者の間で人気のアプリこそ、情報流出の温床になり得る。企業は警戒を怠ってはならない」と警告する。



