犯罪被害者や遺族らの刑事手続きへの関与拡充に向け、法制審議会(法相の諮問機関)の部会の初会合が30日開かれた。犯罪被害者らの権利保護と、被告側が対等な立場で検察側に反論する「防御権」をどう両立させるかが課題となる。
議論の内容
部会では、裁判所と検察、弁護側が裁判前に争点や証拠を絞り込む「公判前整理手続き」への関与や、被害者が裁判に関わる「被害者参加制度」の対象犯罪拡大、傍聴制度の拡充などについて議論。刑事訴訟法などの改正の可否を検討し、来年中の法改正を目指す。
部会は非公開で行われた。法務省の説明によると、被害者支援に携わる弁護士は「公判で十分な被害者参加を行うためにも、被害者やその代理人弁護士が公判前整理手続きに関与することは必要だ」と指摘。被害者参加制度の対象としては特に性犯罪へのさらなる拡大を訴えた。
一方、刑事弁護が専門の弁護士からは「被告の防御権を不当に侵害する恐れがないか検討する必要がある」「導入のニーズだけでなく、弊害についても十分考慮すべきだ」といった意見が出たという。
今後の予定
部会長には互選で酒巻匡・早大院教授(法制審会長)が選ばれた。次回は被害者や遺族へのヒアリングを行う予定。
公判前整理手続きの現状
公判前整理手続きは2005年、裁判員裁判の開始を前に迅速で分かりやすい裁判を目指して導入された。しかし、SNSのデータなどのデジタル証拠の増加に伴い長期化している。最高裁の報告書によると、裁判員裁判の対象事件における平均期間は、09年には2.8カ月だったが、24年は11.8カ月となり、否認事件では14.4カ月だった。
この場で話し合われた内容は、検察が被害者側に説明しているとされる。しかし、非公開の手続きの長期化で裁判がなかなか始まらないため、遺族らがより直接的な関与を求めている面もある。
被害者参加制度
被害者参加制度は08年末に始まった。被害者やその弁護士が法廷に立ち、被告に質問したり量刑などの意見を述べたりできる。23年の利用者は延べ1517人。現在は殺人や危険運転致死傷、不同意性交などの罪が対象だが、ストーカー事件やリベンジポルノ事件などへの拡大を求める声がある。
遺族の訴え
三重県四日市市で運送業を営む寺輪悟さん(57)は「数十年前と比べたら、犯罪被害者への社会の思いは高まった。でも、まだまだ変えられるところはある」と話す。2013年8月、中学3年生だった次女の博美さん(当時15)は友人と花火大会に行った帰り、当時18歳の元少年に襲われ命を落とした。元少年は翌年、強盗殺人容疑などで逮捕された後、強制わいせつ致死罪などで起訴された。寺輪さんは「いきなり刑事裁判というものに巻き込まれ、どんどん進んでいった」と振り返り、被害者参加制度を使い法廷に立った経験を語っている。



