警察庁が発表した今年上半期(1~6月)の特殊詐欺被害額は、昨年同期の1.5倍にあたる1816億円に達し、上半期として過去最悪を更新した。1日当たり約10億円がだまし取られている計算で、認知件数は2万2031件と昨年同期を3408件上回った。
SNS型投資詐欺が被害の44%を占める
手口別ではSNS型投資詐欺が最も深刻で、被害額全体の44%を占めた。1件当たりの被害額は約1363万円に及ぶ。特に著名人をかたったSNSの偽広告からだまされる被害が最多で、昨年同期の3.5倍に上った。次いで、警察官をかたって偽の逮捕状をLINEやビデオ通話で示して脅し、金品をだまし取る手口が28%を占めた。
規制強化も効果認められず
SNS偽広告については、昨年4月に情報流通プラットフォーム対処法が施行され、改正も加えられて規制強化が図られた。しかし、効果は認められていない。SNSを運営する事業者が偽広告を検知し削除するスピードが追い付かないためだ。同法は事業者に詐欺広告の削除手続きの迅速化・透明化を義務付けたが、それを上回るペースで詐欺グループが使い捨てアカウントから偽広告を大量に出稿している。いわゆる「もぐらたたき」状態で、被害が拡大している。
事前排除義務化と表現の自由のジレンマ
状況改善には「偽広告の事前排除」義務化が有効とみられるが、憲法が禁じる「検閲」との指摘があり、対策が進まない。政府や警察は打てる手をためらわずに打つべきだとの声がある。例えば、あらかじめ著名人側と協力し、掲載前に「広告に顔や名前、音声などが無許可使用されていないか」をAIで検知するフィルターを事業者に義務付ける仕組みが考えられる。これなら表現の自由を侵さず、技術の運用によって偽広告の出現を止められる可能性がある。また、詐欺グループが広告掲載の決済に使ったクレジットカードや口座を、国際ネットワークで即座にブラックリスト化することも可能で、決済方法を封じる点で即効性が期待できる。
総じて対策の選択肢が乏しく、詐欺被害を抑止できないことが体感治安を悪化させている。「偽広告の事前検知・排除」という有効策があるのに使えない状況に歯がゆさが募る。非常事態であり、柔軟な法運用が求められている。



