飲食店経営の苦境が鮮明になっている。人件費や原材料費の高騰に加え、消費者の節約志向や生活様式の変化で、従来のビジネスモデルが成り立ちにくくなったためだ。飲食業の今年上半期(1~6月)の倒産件数は過去最多となり、クレジットカード決済代行会社の破産が追い打ちとなる懸念もある。
居酒屋「テマエミソ」の取り組み
7月下旬の週末、大阪市北区の繁華街にある居酒屋「テマエミソ」は、仕事帰りの会社員や観光客らでにぎわっていた。300~400円台からつまみや酒が楽しめるのが売り。会社員の広瀬陽菜さん(25)は「5~6杯ぐらいは飲むので、お酒の安さは店選びのポイント」と話す。
一方、同店では仕入れ価格上昇が経営を圧迫する。開店時(2023年)に比べ、ビールは1割上がり、日本酒も上昇が続く。お手頃な価格維持のため、飲み放題コース(税込み3500円~)はドリンクバー方式を取り入れ、混雑時にはコース以外も時間制限を設けるといった効率化を図っている。
それでも先行きは厳しい。店主の坪田光央さん(41)は「以前は(原価率を抑えられる)お酒をたくさん飲んでもらうことで成り立つ面があった。今はこのビジネスモデルが難しく、忘年会シーズンに向け、飲み放題価格を数百円上げることも考えざるを得ない」と打ち明ける。
倒産件数の推移と原因
東京商工リサーチ(TSR)によると、上半期の飲食業倒産は509件と、1997年の調査開始以来最多を更新した。中でも「居酒屋(酒場、ビアホール)」は118件と上半期として初めて100件を超えた。原因別では9割が「販売不振」で、従業員10人未満の倒産が97.4%を占めるなど、規模が小さいほど苦しさが際立つ。大手チェーンが相次いで値上げする中、客離れを心配し、価格転嫁が進まない店は多い。
TSRは「節約志向もあり、店内の滞在時間が長く、回転率が悪い居酒屋には逆風が強まる」とみる。
決済代行会社の破産と今後の見通し
経営体力を削られている飲食店にとって、クレジット決済代行の全東信(大阪市)破産による売掛金の焦げ付きは、致命傷になりかねない。日本飲食団体連合会(東京)のアンケート(8月13日時点)では、回答した172事業者の約7割が資金繰りが悪化したとし、平均被害額は1店舗あたり58万円に上った。
日本総合研究所の関健太郎シニアマネジャーは「コロナ禍を経て、自宅で飲酒する機会が増えた一方、酒類を提供する定食屋といった競合も拡大している。飲食業の中でも、特に居酒屋を巡る経営環境は厳しい状況が続く」と指摘する。



