日航ジャンボ機墜落事故から41年となり、上野村の墜落現場「御巣鷹の尾根」には、今年も多くの遺族が慰霊登山に訪れている。前橋市の倉林良光さん(79)は長年、尾根の麓にある追悼施設「慰霊の園」などでデジタルホーンによる追悼演奏を続け、故人を悼む遺族に寄り添ってきた。体力面などから尾根には登れなくなったが、「事故の風化防止につながることを願い、演奏を続けていきたい」と話す。
慰霊の園で10曲を演奏
今月11日、慰霊の園には、犠牲者を追悼するデジタルホーンの優しい音色が響き渡った。倉林さんは「見上げてごらん夜の星を」など10曲を演奏し、「安らかにお眠りください」と慰霊塔の前で手を合わせた。
デジタルホーンは、サックスのような形をした電子楽器。倉林さんは県警OBで音楽隊に所属した経験を持ち、退職後の2009年から墜落事故が起きた8月12日などに追悼演奏を行ってきた。
きっかけは品田さんとの出会い
きっかけは、尾根で鎮魂の演奏を続けてきた品田光美さんとの出会いだった。同年5月、前橋市で開かれた音楽イベントに出演した品田さんに演奏方法を尋ねると、初対面にもかかわらず、30分もかけて丁寧に教えてくれたという。
品田さんはその数日後、藤岡市で交通事故に遭って帰らぬ人となった。数週間後に行われた追悼コンサートで、楽器仲間から「品田さんの代わりに演奏を続けてほしい」と言われ、すぐに後を継ぐ決意を固めた。倉林さんも墜落事故当時、尾根で遺体を捜索する警察官の宿の準備を担当するなど、後方支援班として活動。「品田さんと遺族のためにできることをしたい」という一心だった。
尾根に登れなくなっても演奏続ける
以来、毎年8月12日に尾根に登り、慰霊碑や墓標の前で「浜辺の歌」や「故郷」などを演奏。13年には、鎮魂の思いを込めて「御巣鷹山の灯」という曲も作った。演奏を終え、遺族から「今年もありがとう」と言われる度、「待ってくれている人がいる。また来年も来たい」という気持ちになった。
腰痛の悪化や体力の衰えもあり、19年以降は尾根に登ることが難しくなった。それでも「犠牲者と遺族のために」という思いは消えず、ここ数年は8月11日に慰霊の園で追悼演奏を続けている。慰霊の園には、遺族以外の人たちが手を合わせに来ることも多い。「演奏をきっかけに、少しでも事故のことを知ろうという気持ちになってもらえれば」と願っている。



