宮内庁の答弁が浮き彫りにした旧宮家との距離
皇室典範改正案が参院特別委員会で審議され、今国会での成立に向けて大詰めを迎える中、宮内庁の緒方禎己次長が衆議院議院運営委員会で行った答弁が波紋を広げている。緒方次長は、今回の改正で可能となる旧宮家からの養子について、今上天皇と「36親等から38親等の隔たりがある」と明言した。この数字に、宗教学者で皇室史に詳しい島田裕巳氏は「旧宮家とは、天皇家にとってまったくの“赤の他人”ではないか」と疑問を呈する。
改正案は自民党の麻生太郎副総裁を中心に推進され、審議は最終段階にある。しかし、緒方次長の答弁は、旧宮家と現在の皇室との関係が極めて希薄であることを改めて浮き彫りにした。11の旧宮家はすべて伏見宮家に由来し、その始祖は室町時代の崇光天皇の皇子・栄仁親王に遡る。600年以上前に分かれた系統であることが数字として示されたことで、養子案の妥当性に疑問の声が上がっている。
戦後断絶した世襲親王家の役割
旧宮家は戦後に臣籍降下するまで、天皇家との婚姻関係を繰り返してきた。特に伏見宮家は、桂宮家、有栖川宮家、閑院宮家とともに、天皇に世継ぎがいない場合に天皇を出す「世襲親王家」と位置づけられていた。しかし、桂宮家は明治に、有栖川宮家と閑院宮家は戦後に廃絶。伏見宮家も現在の当主に男子がいないため断絶が見込まれている。残るのは明治期に誕生した新しい宮家のみで、世襲親王家としての機能は終わっている。
島田氏は「戦後に役割を終えた世襲親王家の子孫を、なぜ今さら皇室に迎え入れる必要があるのか」と批判する。旧宮家の人々は臣籍降下して一般国民となり、世代を重ねている。皇室との血縁関係は極めて薄く、実質的には「赤の他人」同然だと指摘する。
麻生副総裁の野望と愛子さまの存在感
島田氏は、改正案の背景に麻生太郎副総裁の「御しやすい天皇」を求める政治的思惑があると分析する。審議過程では、愛子さまの存在感が増しており、国民の間で「愛子天皇」待望論が高まっている。しかし、麻生氏は天皇家の長子である愛子さまよりも、男系男子の旧宮家出身者を養子に迎えることに固執しているとされる。
改正案に対しては、保守的な産経新聞を除く多くの新聞が反対の立場を表明。今上天皇も異議を申し立てるかのような発言をしたと伝えられる。島田氏は「改正案は女性差別や身分差別を助長し、現代社会にそぐわない」と断じ、皇室制度の危機を深めるだけだと警告する。
再改正が必然の制度設計
今回の改正で可能となる男系養子案は、旧宮家からの養子に限定されており、恒久的な解決策にはならないと指摘する声もある。旧宮家の子孫も将来的に男子が絶えれば、再び皇位継承危機が訪れる。島田氏は「再改正が必然となる機能不全の制度だ」と述べ、抜本的な見直しが必要だと主張する。
一方、政府・与党内では「男系男子による皇位継承の維持」を重視する声が根強く、愛子さまの皇位継承には消極的だ。しかし、国民の間では愛子さまを支持する意見が広がっており、今回の改正案がさらに議論を呼ぶことは必至である。



