王将社長射殺事件、田中被告に無罪判決 地裁「証明にならず」
王将社長射殺、田中被告に無罪判決 地裁「証明にならず」

「餃子の王将」を展開する「王将フードサービス」の社長だった大東隆行さん(当時72)が本社前で射殺された事件で、殺人と銃刀法違反の罪に問われた田中幸雄被告(59)に16日、無罪の判決が言い渡された。裁判官は、検察が積みあげた間接証拠では犯罪の証明にならないと判断した。

「主文。被告人は無罪」

午後1時半、京都地裁の大法廷。黒っぽいジャケットを着た田中被告が証言台の前に立つと、西川篤志裁判長は「主文。被告人は無罪」と告げた。田中被告は2回うなずいて、説明を聞いた。

田中被告は特定危険指定暴力団幹部「工藤会」系の組幹部。京都府警は、王将の過去の不適切な取引を清算しようとした大東さんが何者かに恨まれ、暴力団に狙われたとみて捜査を進めた。ただ二人に接点はなく、2025年11月に始まった裁判で、田中被告は「決して犯人ではありません」と無罪を主張した。

間接証拠の評価が焦点に

検察側が有罪立証の柱に据えたのは、現場近くで見つかった2本のたばこの吸い殻だ。唾液のDNA型が被告のものと一致し、「現場で待ちぶせした被告が捨てたもの」だと主張した。

さらに、事件後に周辺で見つかった2台の盗難バイクのうち1台から銃の硝煙反応があった▽もう1台の盗難現場近くの防犯カメラに映った車が、被告の幼なじみのものに似ている▽幼なじみがその車を「被告に貸した」と証言した――ことも踏まえ、犯人は被告以外にあり得ないと訴えた。

犯行を間接的にうかがわせる証拠だけで人を有罪とする場合、判例上、その証拠群に「被告が犯人でないと合理的な説明がつかない」ほどの強い事実関係があることが必要となる。地裁はその観点で証拠を検討した。

DNA一致も「強い証拠にならない」

DNAが被告のものであることに疑いはないとしたものの、吸い殻の状況や周辺者の動きが明らかになっていないことなどから、被告が事情を知らないまま下見をしたり第三者が上位者を守るために吸い殻を持ち込んだりした可能性を拭えないと指摘。吸い殻は強い証拠にならないと判断した。

バイクを被告が「盗んだ」という立証もできておらず、防犯カメラに映った車が被告の借りたものとも言い切れないと言及。「被告が実行犯でないとしたら説明がつかない事実関係」は証明できていないとした。