観光庁が31日に発表した今年上半期(1~6月)の都道府県別外国人宿泊者数(延べ人数、速報値)で、愛知・岐阜・三重の3県合計は317万9400人(前年同期比15・3%減)と、大きく減少に転じた。円安ドル高に後押しされたコロナ禍以降の回復・増加基調が変わりつつある。観光地や宿泊施設の人手不足が、受け入れ拡大の壁となっている背景もありそうだ。
犬山城では各階にスタッフ配置
8月下旬に犬山城(愛知県犬山市)を訪れると、天守閣からの展望を楽しもうと、アジアや欧米など各国の観光客らが続々と階段を上っていた。城内で観光客を誘導していた倉田奈緒美さん(63)は「蒸し暑さがきつい。スタッフの人数がぎりぎりで、代わりを立てるのが難しいので、体調管理を頑張っている」と汗を拭いながら話した。
犬山市観光協会によると、以前は犬山城の天守に、入り口と最上階の4階のみスタッフを配置していたが、来場者増に対応して今年から、安全面に配慮するため各階に配置しているという。天守内は空調設備がなく、暑さや寒さが厳しいこともあり、人材確保は容易ではない。同協会は今夏、冷感Tシャツを導入するなど労働環境の改善を進める。
全国平均より大きい減少率
今年上半期の全国の外国人宿泊者数は、前年同期比8・7%減の8324万人だったが、東海3県の減少率はこれより大きかった。JTB総合研究所の上席主任研究員・蓬田崇氏は「中部地域は(当局が訪日旅行の自粛を呼びかけている)中国からの団体ツアーの構成比が大きく、その分影響が強く表れている」と分析する。
海外の要因に加えて、観光地で必要な人材の不足の広がりという国内事情もありそうだ。不規則な勤務が多い宿泊施設も採用に苦労している。
ホテル業界の苦境と対策
ワシントンホテル(名古屋市)の広報担当者は、「調理スタッフなどは一定の経験や技能が必要であり、確保が特に難しい」と話す。同社は人材確保策として、給与の見直しのほか、合同企業説明会で求職者との接点増などを進めているという。しかし愛知県内の別のホテルからは「中部は製造業に人が取られてしまう」との声も聞かれた。
名古屋市や岐阜県では高級ホテルの開業が相次ぐ一方、実際は人手不足のため客室稼働率を抑えて営業しているホテルもあるという。精算では機械を活用したり、セルフサービスを増やしたりして省人化を進めるなど、現実的な対策が求められる。
三重県の誘客策と今後の課題
コロナ禍以降、東海3県では、岐阜県が高いレベルの訪日客数を維持する一方、三重県の回復が大きく遅れる構図が続いていた。三重県は低迷脱却を目指し、訪日客誘致に本腰を入れ始めたが、2026年上半期(1~6月)で増勢を維持することはできなかった。
三重県の外国人延べ宿泊者数を、19年と比べた回復率でみると、24年は全国最下位(47位)で、25年は40位に改善したが、依然として下位に低迷していた。26年上半期はさらなる回復が期待されたが、前年同期比6・6%の減少だった。ただ、全国平均の減少率(8・7%)よりも小幅にとどまり、県の誘客策は一定の効果があったともいえそうだ。
県は昨年以降、誘客策を強化し、旅行会社への営業活動の活発化や、著名なインフルエンサーを用いた魅力発信を進めていた。さらに「現代版お伊勢参り」と称し、伊勢神宮参拝にまつわる歴史文化を体感できる、新たな観光ルートを策定するなど、積極姿勢に転じている。
宿泊施設の増強にも力を入れ、開業時に5億円を上限に補助する制度も設けた。英語対応のスタッフ常駐や、地域の特色を生かした食体験提供などを要件とし、海外富裕層に応える施設増を目指す。
今年6月、初めての本格的な誘客計画となる「みえインバウンド誘客計画」を策定し、31年に年間の外国人延べ宿泊者数を昨年の2倍にあたる75万人とする目標を掲げた。今年後半にかけて、計画遂行で挽回を図れるか注目される。



