10月4日投開票の岐阜県美濃加茂市議選(定数16)に電子投票が導入される。岐阜県内では、選挙無効となった2003年7月の可児市議選以来となる電子投票の「安全性」と「有効性」を実証できるか注目が集まる。
導入の経緯と市の取り組み
美濃加茂市選挙管理委員会は2025年秋、参院選の開票作業が未明までかかり、職員の疲労度や人件費が増大したことを受け、投票時間短縮の検討を始めた。同市では期日前投票者数が全投票者数の50%を超えており、市選管事務局が藤井浩人市長に相談したところ、電子投票導入についても検討するよう求められた。
今年1月の同市長選と市議補選では投票時間を3時間短縮。市長選は無投票だったが、藤井市長が選挙公約に電子投票の実施を掲げていたこともあり、3月の市議会で電子投票を可能にする条例を可決した。
電子投票の仕組みと全国的な広がり
電子投票は、総務省が2020年3月に電子投票の運用指針を見直したことをきっかけに、全国で導入の動きが広がった。新たな指針では、専用の電子機器に限っていた投票機を、市販のタブレット端末も使えるようにした。2024年12月の大阪府四條畷市長選・市議補選で初めて導入され、今年3月の宮崎県新富町議補選や、8月の福岡県粕屋町長選、香川県知事選の同県善通寺市でも使われた。いずれもトラブルの報告はないという。
美濃加茂市選管では、市議選で他の自治体同様に京セラ(京都市)のシステムを使用。ネットワークに接続させず、職員が、投票データが記録された端末内USBとバックアップ用SDのメモリー2個を投票終了後に取り出し、専用ケースに入れた上で開票所に運ぶ。端末には、二重投票の防止策が取られており、有権者が投票すると画面が自動ロックする。投票所の職員が所定のQRコードをかざせばロックが解除され、次の有権者が投票できるようにしている。また停電対策として、端末への給電はコンセントからではなく、ポータブル電源を使う。
期待される効果と課題
電子投票の導入によって、開票時間の短縮と無効票の削減、有権者の利便性向上につながる。同市が8~9月に開催した体験会では、市民409人が参加し、多くの参加者が約30秒で模擬投票を終了させた。端末に不慣れな高齢者の棄権が心配されるが、参加者たちからは「想像以上に簡単だった」と前向きな声が多く聞かれた。
投票では、候補者名を書かないため、難読な疑問票や案分票が発生せず、集計時間の短縮につながる。候補者を「選択せず投票」(白票)することもできる。開票作業が効率化されるため、同市は、開票所の職員を13人とし、従来の45人から大きく減らした。開票時間も1時間程度と想定しており、午後7時50分までに確定するとみている。電子投票だけならば30分以内に確定するが、不在者投票や点字投票は投票用紙を使うため、集計、確認作業が必要だとしている。
同市議選で配備する端末は予備機を含めて計50台。端末レンタル費など投票、集計機器関連費用は約1200万円で、投票用紙の印刷代など自書投票での費用約36万円を大幅に上回る。しかし昨年12月に国の特別交付税措置の金額が引き上げられたため、国の財政支援でまかなえる見込みだ。
可児市の関係者は成功願う
かつて電子投票でトラブルが起きた岐阜県可児市。冨田成輝市長ら市の関係者たちは「美濃加茂市議選での電子投票は絶対に成功してほしい」と口をそろえている。可児市では東海地方で初めて電子投票を導入したが、投票機器のトラブルなどが起き、2005年に最高裁で無効が確定した。投票機器とネットワークでつながった集計用サーバー内のMOユニット(記録装置)の過熱が原因で、記録装置の保護回路が作動し、全投票所で最長1時間23分も投票を受け付けなくなった。不具合の対応時にもミスが起き、投票総数が投票者数を上回る事態となった。
同市はトラブルがあっても、電子投票には多くのメリットがあり「これを推進する立場を堅持する」と訴え続けている。安全な電子投票を行うためシステムの認証制度の創設や、国政選挙への導入などを国に要望もしてきた。
もっとも、市総務課で選管事務局担当の金子浩課長(56)は美濃加茂市の電子投票の成功を願う一方、「導入可否の判断基準は費用対効果で検証中だ」とも話す。可児市では31か所に投票所を設置しているが、電子投票における国の財政支援額は、投票所1か所当たりの有権者数の規模によって決まる。現状の投票所数で電子投票を行った場合は、支援額だけでは機器のレンタル料などはまかなえず、市の持ち出しが発生する計算になるという。金子課長は「自書投票より高額な選挙費用を負担してまで享受するほどのメリットなのか見極めなくては」としている。



