PC・スマホのデータ復旧トラブル相次ぐ 「復旧できず高額請求」相談75件
データ復旧トラブル相次ぐ 復旧できず高額請求の相談75件

破損したパソコンやスマートフォンに保管されたデータの復旧を巡り、「復旧できなかったのに高額の費用を請求された」などと顧客が訴えるトラブルが相次いでいる。業界団体はガイドラインを作って対策に乗り出しているが、収まっていない。

「復旧率95.2%」を信じた大学教授

「言っていることとやっていることがあまりに違う」。山形県天童市の大学教授(56)は、データ復旧会社の対応に憤る。大学教授は2023年4月、仕事で使うハードディスク(HDD)を落として壊してしまった。データを戻せないかと三つの企業に依頼したが、破損が激しく、全社から断られた。「復旧率95.2%」と表示していた東京の会社のホームページを見つけ、すがる思いで問い合わせた。

同社の担当者は「我々の技術力なら復旧できない可能性は低い」と説明。費用として90万円以上を提示された。交渉の結果、復旧したデータを保管する月額約5万円のサービスに最低1年間加入することを条件に値下げするプランで契約することにし、数日後に契約金12万6500円を振り込んだ。

復旧できず返金なし、提訴して和解

ところが約10日後、担当者から「復旧できなかった」と電話がかかってきた。契約金は返金されず、不要になったデータ保管サービスもなかなか解約させてもらえなかった。大学教授は2024年6月、同社に依頼した他の顧客ら4人とともに契約金の返還と慰謝料を求めて東京地裁に提訴した。4人の中には、契約を迷っているうちに見積もりのために預けたHDDに勝手に通電され、「ここで通電を中断するとデータが壊れてしまう」と言われ、契約せざるを得なかった人もいるという。

同社は訴訟で「復旧できなくても費用の返還はできないことは伝えている」などと争う姿勢を見せたが、今年6月までに、顧客側が要求した慰謝料も含むほぼ全額を5人に支払う内容に合意し、和解した。和解金額は公表されていない。大学教授らの代理人を務めた山中真人弁護士は「泣き寝入りする人も多いと思う。業界が少しでも良くなってほしい」と語った。同社は読売新聞の取材に「今後もお客様一人ひとりに対して誠実な対応を心がけてまいります」とコメントした。同社に対しては今月1日、別の顧客6人が新たに損害賠償を求めて東京地裁に提訴している。

業界団体への相談は計75件

業界団体「日本データ復旧協会」(東京)によると、データ復旧を取り扱う企業はパソコンやスマホの普及とともに増え、国内で100社ほどがある。「誤って消してしまった子供の写真を取り戻したい」「パソコンが突然壊れ、データが見られない」といった理由で利用する人が多いという。企業側は資格不要で参入でき、価格の相場も決まっていないため、顧客と企業との間でトラブルが起こりやすい。

同協会は2022年8月、業界向けにガイドラインを策定した。データ復旧ができなかった場合、「多額の費用を請求しない」などと要請。「復旧率」については、合理的な根拠を示すのが難しいとして「宣伝には使わない」ことを求めている。しかし、その後もトラブルは続いている。同協会には「契約を急がされた」「復旧できなかったのに高額の料金を取られた」といった相談が寄せられており、2024年は23件、2025年は36件、2026年は1~8月で16件の計75件に上る。国民生活センターにも、複数の企業とのトラブルに関する相談が来ているという。

同協会に加盟しているのは14社・団体。同協会の担当者は「加盟社以外にも健全なサービスを展開している企業はあるが、ごく一部の企業でガイドラインに沿わないサービスが続いている結果、トラブル相談が絶えず、業界全体に問題があると誤認されている」と懸念する。消費者問題に詳しい渡辺大祐弁護士は「データを失った消費者は『早くなんとかしたい』と焦りがちだが、企業に依頼する前に広告の内容をよく見て、『復旧率』の文言があれば、その数字に根拠があるのかや料金、企業の評判などを調べる必要がある。慎重な対応が消費者にも求められる」と指摘する。