ブータンの農業関係者8人が30日、兵庫県丹波篠山市矢代地区を訪れ、サルよけのために田畑に設置した電気柵などを視察した。ブータンでは近年、耕作放棄地が増加し、サルなどの野生動物による農作物被害が深刻化しているという。
先進地・矢代地区での視察内容
一行はブータンの農業畜産省や県行政庁の職員らで、独立行政法人国際協力機構(JICA)のプログラムで来日。獣害対策に取り組む集落や関係省庁などを10日間の日程で訪問している。矢代地区は、2010年代から集落を挙げてサル対策に取り組み、一定の効果を上げていることから視察先に選ばれた。
現地では、自治会長の松本豊さん(70)らが対応し、花火で音をたててサルを追い払う方法を実演し、電気柵や防護柵に案内した。さらに、放置果樹の伐採、餌となる食品廃棄物の除去、山林の一部を間伐し、見通しのよいバッファゾーンを設けるなどの対策も説明し、「地道な取り組みを少しずつ進めることが大事」と述べた。
ブータンで広がる農作物被害
一行にコーディネーターとして参加した兵庫県立大の山端直人教授(野生動物管理)らによると、「幸せの国」と言われるブータンでも、近年は農村部の若者が仕事を求めて都市部や海外に流出するケースが増加。担い手が不足することで、耕作放棄地が拡大し、サルなどの野生動物が集落に来てしまうという日本と同じ構図になっている。
野生動物による農作物被害はブータン全体の収量の3割にも及ぶと推測されているといい、JICAは農業畜産省とともに2025年度から住民主体の獣害対策の普及を実践。電気を用いた防護柵の設置などを試みている。
現地職員の感想と今後の課題
農業畜産省職員のイェシ・デマさんは「サルの捕獲は宗教上の理由で難しく、花火の活用も大気の乾燥したブータンでは安全管理を十分に考えないといけない。ただ、放置果樹の伐採や食品廃棄物の除去などはすぐにでも実践でき、非常に参考になった」と話していた。