口座残高209円、月収11万円でも生活保護を受けない49歳男性の生き方
口座残高209円、月収11万円でも生活保護を受けない男性

口座残高209円、月収11万円のリアル

「口座残高は209円ですよ。見ますか」――編集者・ライターの松本祐貴氏による連載『“現金とっぱらい”の現場で』の取材中、49歳の男性・戸田正和さん(仮名)はそう言ってスマートフォンの画面を見せた。ここ数年、彼の主な仕事はイベント会場などの日払い派遣だ。月に10日から15日ほど仕事に入っている。

「月収は10万円から11万円ぐらいです。そこから年金、健康保険料、住民税を払い、3万9000円の家賃を払うと、あとは光熱費や通信費、食費に消えます。貯金をする余裕はないので残高はいつもこんなものですよ。家賃を払うために毎月必死で働いています」

現場によるが、日雇いの日給は数千円から1万3000円ほど。9時間拘束で1万円前後、12時間拘束で1万3000円程度。所得税の源泉徴収はされている。最近は人気のカードゲームの大会での受付や案内、幕張メッセなどのイベント手伝いが多いという。

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派遣会社に4社ほど登録し、仕事が入ると連絡が来る仕組みだが、「来年には50歳ですからね。雇う側もおっさんより若い子の方が使いやすいのか、案件も減ってきています。春先、夏、年末前の12月はイベントが多いんですが、そのほかの時期は仕事が減りますね」と彼は語る。

正社員を目指しゲームセンターに10年勤務

戸田さんは昭和51年生まれ、就職氷河期世代のど真ん中。ゲームセンター、家電量販店、新聞拡張員、福島の除染作業、イベント派遣と流れ流れて、日払い仕事にたどり着いた。生活保護も経験し、現在も月収11万円の労働を続ける理由を聞いた。

「やりたくなければ断れる。そこは自由っちゃ自由ですね」と彼は言う。しかし、その自由の裏には、正社員としての安定を求めた過去がある。ゲームセンターに10年勤務し、正社員を目指したがかなわず、その後は家電量販店や新聞拡張員、福島の除染作業など、流れるままに仕事を転々としてきた。

「何もしない時間こそがキツい」と彼は3年間の生活保護経験を振り返る。生活保護を受ければ最低限の生活は保障されるが、その「何もしない時間」に耐えられず、日払いの仕事を選んだという。

「やり直しがきく」のは30代まで

戸田さんの人生は、就職氷河期世代の一例と言える。彼は「やり直しがきく」のは30代までだと感じている。40代後半になり、正社員としての再就職は現実的ではないと悟った。日払い派遣という不安定な働き方でも、自分の意思で働き、生活保護に依存しない生き方を選んでいる。

月収11万円、口座残高209円という厳しい状況でも、彼が生活保護を受けない理由は「自由」と「自分の責任」にある。社会保障に頼らず、自分の力で生きることを選んだ彼の姿は、現代日本の雇用情勢や社会保障制度の課題を浮き彫りにしている。

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