81歳弁護士が語る付審判の意義と難しさ「第三者の目で捜査正される」田渕検事公判前に
81歳弁護士が語る付審判の意義と難しさ 田渕検事公判前に

大阪地検特捜部の捜査で違法な取り調べをしたとして特別公務員暴行陵虐罪で付審判決定を受けた田渕大輔検事(54)の公判が大阪地裁で10日に始まるのを前に、過去の別の付審判で検察官役を務めた三上孝孜(たかし)弁護士(81)が取材に応じた。自身の経験を振り返り、「弁護士が第三者の厳しい目で立証するからこそ、捜査が正される」と語った。

約40年前の阪神日本一祝勝騒ぎでの事件

三上弁護士が担当した事件は、プロ野球・阪神タイガースが日本一となった1985年11月に起きた。大阪市内の繁華街を警戒中の大阪府警の警察官が、阪神の旗を車に付けて祝勝騒ぎを見に来ていた男性と友人に職務質問を行った。友人が運転免許証を示さなかったことから、警察官は2人を警察署に連れて行き事情聴取。この際、男性に正座を求めたが従わなかったため、警察官は頭部を平手打ちし、男性は耳の鼓膜が破れるけがを負った。

大阪地裁は1990年、この警察官について特別公務員暴行陵虐致傷罪の付審判を決定。三上弁護士ら2人が指定弁護士に選ばれた。三上弁護士は「向き合う相手は警察組織。大変な事件になる」と身が引き締まった。補充捜査は、現場の実況見分の際、警察から被害者の立ち会いを拒否されるなど難航した。

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公判での証言と判決

公判で警察官は暴行を否定し無罪を主張。2人の事情聴取の場にいた同僚警官は皆、警察官の弁解に沿う証言をした。三上弁護士らは、男性と目撃者である友人の証人尋問で、当時の詳細な様子を明らかにした。判決は有罪とした上で、「同僚の証言は到底信用できず、遺憾というほかない」と言及した。

三上弁護士は「組織ぐるみで責任を逃れようとする警察の不正を追及できた」と胸を張る一方、「有罪立証に手いっぱいで、警察の組織風土にまで踏み込めなかった」とも述べた。

田渕検事公判への期待

田渕検事の公判では、容疑者に対し「検察なめんなよ」「大罪人」などと発言した取り調べについて審理される。三上弁護士は「行き過ぎた取り調べを放置すれば、刑事司法の根幹が揺らぐ。付審判は、捜査機関が自らのあり方を省みる機会になる」と強調。「田渕検事の言動の背景に、プレッシャーを感じるような上司の指示や、組織風土はなかったか。指定弁護士には、検察全体の問題を明らかにしてほしい」と期待した。

付審判の有罪立証の難しさ

最高裁によると、これまでに付審判で公判が開かれたのは22件。被告は警察官や刑務官で、逃げようとする容疑者の制圧行為や職務質問・取り調べでの暴力が多い。有罪は4割の9件だった。取り調べを巡る付審判では、被告が暴行を否定した場合、密室でのやり取りのため有罪立証に十分な証拠を集められず、無罪となったケースが多かった。今回、田渕検事の取り調べは映像が残っており、公判では取り調べ中の言動の評価が争点となる。

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