血糖値とHbA1cの違いとは?「血糖値は正常、HbA1cだけ高い」理由と健診結果の見方
血糖値とHbA1cの違い、健診結果の見方を解説

健康診断では、糖代謝に関する項目として「血糖値」や「HbA1c」などが測定されます。どちらも糖尿病の発見につながる重要な指標ですが、表しているものは同じではありません。「血糖値は高くないのにHbA1cは高い」という結果になることもあります。血糖値とHbA1cの違いや、健診結果を見るときに知っておきたいポイントを解説します。

血糖値とHbA1cの違い

糖尿病は、インスリンの作用不足によって慢性的に血糖値が高くなる病気です。血糖値とHbA1cは、いずれも糖尿病の診断や血糖コントロールの状態を把握するために使われる検査ですが、大きな違いは「いつの血糖状態を反映しているのか」という点です。

血糖値とは、血液中にどのくらいブドウ糖が含まれているのかを示す値で、単位は「mg/dL」です。血糖値は食事や運動、薬、体調などさまざまな要因によって変動し、特に食事の影響を受けやすいのが特徴です。食事から摂取した糖質が消化・吸収されると血糖値は上昇し、その後、インスリンの働きによってブドウ糖が細胞に取り込まれるなどして低下していきます。つまり、健康診断などで測定する血糖値は、基本的に「採血した時点」の血糖状態を表しています。

血糖値は常に変動しているため、食事からどのくらい時間が経っているかなどによって数値の意味が変わります。そのため、糖尿病の診断では空腹時血糖値や75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の2時間値、随時血糖値などが用いられます。

一方、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは、赤血球に含まれるヘモグロビンにブドウ糖が結合したものです。ヘモグロビンは赤血球の中にあり、全身へ酸素を運ぶ役割を担っています。血液中のブドウ糖の濃度が高い状態が続くほど、ブドウ糖と結合したヘモグロビンの割合も高くなります。HbA1cは、血液中のヘモグロビンのうち、ブドウ糖が結合したヘモグロビンがどの程度の割合を占めているかを示す指標で、単位は「%」です。

赤血球の寿命は約120日ですが、HbA1cは過去1~2カ月程度の血糖状態を反映する指標として用いられています。血糖値とは異なり、採血直前の食事によって大きく変動しないことも特徴です。

血糖値とHbA1cが一致しない理由

健康診断で、「血糖値は高くなかったのにHbA1cは高かった」という結果になることがあります。これは、血糖値とHbA1cがそれぞれ異なる期間の血糖状態を反映しているためです。血糖値は採血した時点の値ですが、HbA1cは過去1~2カ月程度の血糖状態を反映します。そのため、採血時の血糖値が高くなくても、それ以前に血糖値が高い状態が続いていれば、HbA1cが高くなることがあります。

逆に、HbA1cはそれほど高くないのに、血糖値が高いこともあります。例えば、食後に血糖値が上昇している場合や、ごく最近になって血糖値が急激に上昇した場合などです。急激に血糖値が上昇する原因の一つとして、1型糖尿病の発症なども考えられます。1型糖尿病は、主に自己免疫などによって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンの分泌が低下することで発症する糖尿病です。生活習慣が直接の原因となる病気ではなく、インスリン治療が必要になります。

血糖値とHbA1cの結果が一致しない背景には、血糖値そのものとは別の要因が影響していることもあります。HbA1cは赤血球やヘモグロビンの状態の影響を受けるためです。例えば、鉄欠乏性貧血では、実際の血糖状態に比べてHbA1cが高めに出ることがあります。反対に、赤血球の寿命が短くなる溶血性貧血などでは、HbA1cが実際の血糖状態より低めに出ることがあります。このほかにもHbA1cの値に影響する病態があるため、血糖値とHbA1cが大きく食い違っている場合は、どちらか一方の数値だけで自己判断しないことが大切です。

糖尿病の診断基準と健診結果の見方

血糖値やHbA1cが基準値以上だったからといって、その1回の結果だけで必ず糖尿病と診断されるわけではありません。日本糖尿病学会では、血糖値やHbA1cなどを組み合わせて糖尿病を診断します。

血糖値では、次のいずれかを満たした場合に「糖尿病型」と判定されます。

  • 空腹時血糖値:126mg/dL以上
  • 75gOGTT 2時間値:200mg/dL以上
  • 随時血糖値:200mg/dL以上

一方、空腹時血糖値110mg/dL未満かつ75gOGTT 2時間値140mg/dL未満の場合は「正常型」と判定されます。「糖尿病型」にも「正常型」にも当てはまらない場合は「境界型」と判定されます。なお、空腹時血糖値100~109mg/dLは正常型の範囲に含まれますが、日本糖尿病学会では「正常高値」とされ、必要に応じて75gOGTTなどによる詳しい評価が検討されます。

HbA1cは6.5%以上の場合に「糖尿病型」と判定されます。ただし、「糖尿病型」と判定されることと、「糖尿病」と診断されることは同じではありません。例えば、同じ採血で血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型であることが確認されれば、その1回の検査でも糖尿病と診断されます。一方、HbA1cだけが糖尿病型の場合、HbA1cだけを繰り返し測定して糖尿病と診断することはできません。糖尿病の診断には、少なくとも一度は血糖値が糖尿病型であることを確認する必要があります。

また、血糖値が糖尿病型で、口渇、多飲、多尿、体重減少など糖尿病の典型的な症状がある場合や、確実な糖尿病網膜症が認められる場合には、1回の血糖検査でも糖尿病と診断されることがあります。診断が確定しない場合は、時期をあけて再検査などが行われます。

糖尿病には診断基準がありますが、「糖尿病の診断基準に達していない=何も問題がない」というわけではありません。例えば特定健診では、血糖に関する特定保健指導の階層化に用いられる基準として、空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c5.6%以上などが設定されています。これは糖尿病の診断基準である空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上より低い数値です。

そのため、健診で「糖尿病ではないから大丈夫」と考えるのではなく、血糖値やHbA1cが以前と比べてどのように変化しているかを見ることも大切です。糖尿病の発症リスクは、加齢や肥満、家族歴、生活習慣などさまざまな要因によって変わります。過去の健診結果と比べて血糖値やHbA1cが上昇している場合や、健診で再検査・受診を勧められた場合は、そのままにせず対応しましょう。

また、高血糖は高血圧や脂質異常症などと重なることもあり、それぞれが動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めます。健診では血糖値だけ、HbA1cだけを見るのではなく、ほかの検査項目も含めて自分の健康状態を確認することが大切です。

専門医に聞く、検査値の見方と受診の目安

糖尿病の専門医である一宮西病院内分泌・糖尿病内科部長の伏見宣俊先生は、健診の血糖値は朝の空腹時という「点」の値ですが、HbA1cは過去1~2カ月間の「平均血糖値」を反映していると説明します。そのため、空腹時の血糖値が高くなくてもHbA1cが高い場合、食後をはじめとする他の時間帯に血糖値が高くなっている可能性が考えられます。「血糖値が正常だから大丈夫」と放置せず、慢性的な高血糖状態(糖尿病予備群や軽度糖尿病)が始まっているかもしれないと捉えることが大切だとしています。

以下の場合は、再検査・医療機関への受診を検討してください。

  • HbA1cが6.0%以上の場合:糖尿病予備群または糖尿病が強く疑われます。医療機関を受診し、食後血糖値の測定や「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」などの詳しい再検査を受けましょう。
  • HbA1cが6.5%以上の場合:糖尿病の可能性が非常に高いため、放置せず速やかに受診してください。
  • 鉄欠乏性貧血などの持病がある場合:赤血球の代謝などの影響で、実際の血糖状態よりHbA1cが高めに出ることがあります。心当たりのある方は医師に伝え、総合的に判断してもらいましょう。

早期に発見し、食事・運動の見直しや適切な精密検査を開始することが、将来の糖尿病合併症予防につながります。