オランダのアムステルダム大学などに所属する研究者らは、医学誌「JAMA Neurology」に発表した論文「Amateur Soccer Heading and Acute Elevations in Blood-Based p-Tau217 and S100B」で、アマチュアサッカーの試合で実際に生じるヘディングが脳の損傷を示す血液バイオマーカーに影響を及ぼすかを検証した。
研究の概要と対象者
この研究は、2024年8月から12月にかけて開催されたアマチュアサッカーの公式試合に参加した、神経疾患の既往歴がない18歳以上の男性選手302人(平均年齢24.6歳)を対象に行われた。
ヘディングの頻度と衝撃
研究チームは、試合前、試合直後(1時間未満)、試合の24~48時間後に選手の血液サンプルを採取。同時に、ビデオ分析によってヘディングの頻度と強度(ボールの軌道距離など)を定量化し、心拍数や位置情報モニタリングを用いた運動強度のデータも含めて解析時の調整を行った。
対象選手の72%(216人)が試合中にヘディングを経験しており、1人1試合あたりの平均ヘディング回数は2回であった。また、全体の48%が飛距離20mを超えるボールをヘディングする高衝撃のヘディングを行っていた。
血液バイオマーカーの変化
分析の結果、ヘディングを行った選手は、行わなかった選手と比較して、試合直後の血液中におけるS100B(脳の細胞から漏れ出るタンパク質で、血中の量が脳へのダメージの目安になる)濃度が有意に上昇していた。さらに、ヘディングの回数が多いほど、S100Bおよびp-tau217(アルツハイマー病の血液検査に使われる、神経細胞由来のタンパク質)の濃度上昇が大きくなるという用量反応関係も確認された。高衝撃のヘディングを経験した場合も同様に、これらの数値の上昇が認められた。
上昇は一時的、正常値に回復
ただし、今回観察されたバイオマーカーの上昇は一時的なもので、試合の24~48時間後には正常な水準に戻っていた。血液量を調整した感度分析でも結果は変わらなかった。



