滋賀県内の公立病院が深刻な経営難に陥っている。長浜市では市立2病院と長浜赤十字病院の経営統合計画が資金不足で先送りされ、県立病院も巨額の赤字を抱える。人口減少と少子高齢化の波が医療現場を直撃しており、持続可能な医療提供体制の構築が喫緊の課題となっている。
長浜市の病院統合計画が暗礁に
4月22日、長浜市役所で開かれた「市病院再建・再編推進本部」の初会合で、浅見宣義市長は「人口減が急激に進む湖北圏域の病院経営は大変難しい状況だ」と危機感をあらわにした。同市は当初、2027年春にも日本赤十字社(東京)を指定管理者として、長浜(大戌亥町)と湖北(木之本町)の市立2病院と長浜赤十字(宮前町)の3病院を経営統合する計画を掲げていた。
しかし、2024年冬に市立2病院の運営資金が2025年度から5年間で計約37億円不足することが判明。計画を先送りし、まずは2病院の経営改善を優先することになった。市幹部は「人口減少の影響が行政全般に及んでいる。このままでは、医療以外の行政サービスにも影響が及ぶ」と打ち明ける。
市は今月9日の会合で、2029年度までに3病院の経営一体化にめどをつける方針を示した。浅見市長は「子や孫の世代に何を残せるか。(長浜赤十字と市立長浜の)高度急性期病院が二つある現状を見直し、具体的に議論を深めていく必要がある」と述べている。
県立病院も赤字拡大、基金枯渇の恐れ
県立病院も経営難に直面している。総合病院(守山市)と精神医療センター(草津市)は2024年度に計約19億円の赤字を計上し、2025年度も計約25億円の赤字を見込む。医薬品や資材、人件費の高騰が損失を膨らませている。2病院の財政状況は厳しく、2040年度には運営資金を支えてきた基金が底を突く可能性がある。
病院側は診療報酬加算による収益向上を目指して手術件数を増やすほか、病床稼働率を踏まえて3月から一般病床を47床減らし、経営改善を図る方針だ。有識者らで構成する県立病院経営協議会は今月、経営形態見直しの議論を始めた。
こうした中、2025年1月に総合病院と統合した県立小児保健医療センターの代替となる小児新棟は、コロナ禍などの影響で完成が大幅に遅れている。長女が日常的に医療的ケアを必要とし、同センターを20年来利用する大津市の女性(41)は「県立の医療機関はなくてはならない。今の体制を維持してもらわないと、生活も命も続かない」と不安を語る。
全国的な公立病院の赤字問題
公立病院の赤字は全国的な課題だ。国は高齢者数がほぼピークとなる2040年度に向け、2028年度までの新たな「地域医療構想」の策定を都道府県に求めている。滋賀県によると、県内7医療圏全てでリハビリなどに用いる「回復期」の病床が不足している。働き手や社会保障制度を支える世代が減少し、医療従事者の確保や安定的な病院経営が難しくなっている。
県の担当者は「国が示す指針を基に、持続可能な医療提供体制の確保に向けた具体的な構想を考えていく」と述べる。
知事選の公約と今後の展望
今回の知事選で三日月知事は、湖北などの医療圏ごとの病院機能の再編や、外来・在宅医療・介護との連携を含むトータルでの医療提供体制の構築を公約に掲げた。4期目に向け、「長寿化に伴う課題が顕在化している。医療機関の経営を下支えし、地域医療や介護、福祉の仕組みを整えていく」と強調する。
安定した医療提供体制は県民の暮らしの基盤となる。少子高齢化の時代に即したあり方を、早急に示す必要がある。(この連載は矢野彰、青山大起、田中志歩、清家俊生が担当しました)



