新型コロナウイルス感染症の後遺症(ロングCOVID)に苦しみ、約1年半の休職を余儀なくされた東洋経済の記者が、仕事復帰に至るまでの実体験を漫画エッセイで描き、大きな反響を呼んでいる。同記者は2021年春に感染し、その後、倦怠感や思考力の低下、睡眠障害などの症状に長期間悩まされた。休職中は症状の波に翻弄されながらも、徐々に日常生活を取り戻し、2022年秋に職場復帰を果たした。
後遺症との闘いと休職の決断
感染当初は軽症だったが、数週間後から強い倦怠感が出現。集中力の低下や「ブレインフォグ」と呼ばれる思考の濁りが生じ、仕事のパフォーマンスが著しく落ちた。同記者は「原稿を書こうとしても文字が頭に入ってこない。単純な計算すらできなくなった」と当時を振り返る。医師の勧めもあり、2021年夏に休職を決断。休職期間は約1年半に及んだ。
休職中は、症状の悪化を防ぐために「ペーシング」と呼ばれる活動量の調整を徹底。できることとできないことを見極め、無理をしない生活を心がけた。また、オンラインの患者コミュニティで情報交換を行い、同じ悩みを抱える人々とのつながりが精神的な支えになったという。
復職への道のりと職場の理解
復職にあたっては、職場と綿密な協議を重ねた。同記者は「最初からフルタイムで復帰するのは難しいと判断し、短時間勤務から始めることにした」と説明する。会社側も時差出勤や在宅勤務の継続、業務量の調整など、柔軟な対応を取ってくれたという。しかし、復職後も症状は完全には消失しておらず、体調の波に悩まされる日々が続いている。
「周囲には『治った』と思われがちだが、実際にはまだ完全ではない。見えない障害ゆえに理解を得るのが難しい」と同記者は訴える。特に、思考力や集中力の低下は外からは見えにくいため、周囲の誤解を招くこともあるという。
後遺症の実態と社会の課題
厚生労働省の調査によると、新型コロナ感染者の約10~20%に後遺症がみられるとされる。しかし、その症状や期間は個人差が大きく、標準的な治療法も確立されていない。後遺症に悩む人々が職場復帰する際には、個々の状況に応じた柔軟な対応が求められる。
同記者は「後遺症は決して特別なものではない。誰にでも起こり得る。職場や社会全体で理解を深め、サポートする仕組みが必要だ」と強調する。自身の経験を漫画にした理由についても「同じ悩みを抱える人に勇気を与えたい。そして、後遺症の実態を多くの人に知ってほしいから」と語っている。
復職後の現実と今後
現在、同記者は週4日の短時間勤務で業務を続けている。それでも、締め切りが重なると体調を崩すこともあるという。「以前と同じように働けるようになるには、まだ時間がかかるかもしれない。でも、一歩ずつ前に進んでいる実感はある」と前を向く。
新型コロナの流行から3年以上が経過し、社会は日常を取り戻しつつある。しかし、後遺症に苦しむ人々は今もなお、見えない壁と闘い続けている。同記者の体験は、ロングCOVIDの実態と、職場復帰を目指す人々が直面する課題を浮き彫りにしている。



