香港の調査会社GMTリサーチが公表したレポートにより、中国の電気自動車(EV)最大手BYDに7兆円を超える「隠れ負債」が存在することが明らかになった。これは公式の財務諸表には計上されていない実質的な債務であり、同社の資金繰りが極めて危険な状態にあることを示している。
GMTリサーチが暴いたBYDの巨大隠れ負債
GMTリサーチは、かつて中国恒大集団の財務問題を早期に指摘した実績を持つ調査会社である。同社の試算によると、2024年6月末時点でBYDの実質的な純負債は3230億元、約7兆6000億円に達する。一方、BYDが公式に開示している純負債は277億元にとどまっており、GMTの推計額はその10倍を超える。この乖離の背景にあるのが、サプライヤーへの支払いを長期化させる「サプライチェーン・ファイナンス」である。これは、BYDグループ内で通用するいわば「グループ内手形」のような仕組みで、未払い金が雪だるま式に膨れ上がっている。
値引き競争が生んだ消耗戦
中国EV市場は、圧倒的な価格競争力を武器に急成長してきたが、その裏で繰り広げられる値引き競争が各社を疲弊させている。王者BYDと雖も、販売台数は伸び悩み、利益率は低下している。2025年にBEV販売でテスラを抜いたBYDだが、その輝かしい成功の裏で、資金繰りは綱渡りの状態にある。評論家の白川司氏は、「BYDの債務は中国EV企業の中でも突出しているが、これは一社の経営リスクではなく、中国のEVメーカー全体が抱える脆弱性と考えるべきだ」と指摘する。
サプライヤーへのしわ寄せと業界全体のリスク
サプライチェーン・ファイナンスによる支払い遅延は、サプライヤーに深刻な影響を与えている。未払い金が長期化すれば、サプライヤーの資金繰りが逼迫し、連鎖倒産のリスクも生じる。万が一、BYDが破綻した場合、そのしわ寄せはすべてサプライヤーに及び、中国EV産業全体に壊滅的な打撃を与える可能性がある。白川氏は、「日本政府は中国EVへの補助金を中止すべきだ」と警鐘を鳴らす。
習近平政権の袋小路
中国のEV産業は、習近平政権が掲げる「エンジン車では勝てない」という戦略のもと、国家を挙げて推進されてきた。しかし、今やその戦略は「後戻りできない」袋小路に入り込んでいる。値引き競争と隠れ負債の問題は、中国EV産業の持続可能性に深刻な疑念を投げかけている。BYDの例は、中国のEV戦略全体が内包する脆弱性を象徴しており、今後の動向が注目される。



