精神科医の和田秀樹氏は、心のケアへの関心が高まる一方で、その評判は思わしくないと指摘する。話をほとんど聞いてもらえず、すぐに薬を出されるといった苦情が広がっているという。
精神科教授にカウンセリング専門の大学がゼロ
日本は保険診療のおかげで医者にかかりやすいが、話を長く聞いてもほとんどお金にならない事情がある。しかし、それ以上に問題としたいのは、全国に82ある大学医学部(防衛医科大学校含む)の中で、精神科の主任教授のカウンセリングが専門の大学が一つもないことだ。本邦における認知療法の大家で、皇后さまの主治医として知られる大野裕先生も医学部の教授にはなっていない。
医学教育の現状と改善策
和田氏が医者になった頃は、心の医療を学びたい場合、専門の大学の医局を選ぶことができた。同期の一人は名古屋市立大に行き、心の名医である木村敏先生の指導を受けた。しかし、今はそれができないという。さらに精神科の講義は、かつて医学生が心の問題を学ぶ場だったが、今は心の病の生物学的メカニズムを学ぶ場になっている。一般の科の若い医師たちが患者の話を聞かず電子カルテばかり見ている一因になっていると指摘する。
医学部の精神科教授は一般科の教授たちの多数決で決まるため、彼らが心の医療に関心がないことで、こうした現状が生まれた。和田氏は、厚生労働省がもう少し医学教育に介入すべきだと提案する。また、もう一つの解決策として、数少ない心の治療の名医を集めて心の治療の養成学校をつくることを挙げる。
米国の養成学校で学んだ経験から
和田氏は米国に留学し、カール・メニンガー精神医学校という精神科の専門医の養成学校で学んだ。さまざまな心の治療法についてみっちり学ぶことができ、自らも患者として治療を受ける体験もできて、30年以上たった今でも役立っているという。こうした養成学校を全国20カ所ほどつくれば、日本の心の治療のレベルは上がるはずだと述べる。
精神状態は免疫力にもつながるため、健康にも直結する。和田氏は政治の力で心の医療の充実を願いたいと結んでいる。



