健康で長生きするためには、日々の食事が重要だ。岐阜大学名誉教授で循環器専門医の湊口信也氏は、著書『果物野菜で100歳を生きる』(さくら舎)の中で、カリウムを豊富に含む食材の摂取が血圧を下げるだけでなく、脳卒中や心血管疾患、さらには死亡リスク全体を低下させることを明らかにしている。
果物・野菜が血圧を下げる仕組み
果物や野菜の摂取が血圧を低下させる主な理由は、これらにカリウムが多く含まれているからだ。摂取したカリウムは血液中に吸収され、血中濃度が上がると細胞内に取り込まれる。この時、細胞内のナトリウムがナトリウム-カリウム交換作用によって血液中に放出される。血液中のナトリウム濃度が上昇すると、腎臓でのナトリウム再吸収が抑制され、尿中へのナトリウム排出と利尿作用によって血圧が下がる。
腎臓では、ナトリウム-クロライド交換輸送体というイオン輸送体がナトリウムとカリウムのバランスを調整している。この輸送体が活性化するとナトリウムが体内に蓄積され血圧が上昇し、逆に抑制されるとナトリウムが排出されて血圧が低下する。また、輸送体の働きが抑えられると尿中にカリウムが多く排泄される。カリウムを多く摂取すると、その排泄のために輸送体の働きが抑えられ、結果としてナトリウム再吸収が抑制され、血圧が下がる。
さらに、カリウムには交感神経の活動を抑制する効果もある。交感神経が亢進すると血圧が上昇するが、抑制されると副交感神経が優位になり、心拍数が低下し血管が拡張して血圧が下がる。
カリウムが豊富な食材
カリウムは果物、野菜、海藻類などに豊富に含まれる。生で食べられるものは生で、調理する場合は煮汁ごと食べるのが推奨される。特にカリウム含有量が多い果物には、アボカド、キウイフルーツ、バナナ、露地メロン、さくらんぼ、リンゴ、ナシ、柿などがある。乾燥果物では、きはだ(実)、くこ(実)、乾燥あんず、乾燥バナナ、ドライマンゴーも豊富だ。野菜では、パセリ、ブロッコリー、ホウレン草、えだまめ、春菊、ニンジンが挙げられる。乾燥野菜では、干しずいき、切り干しダイコン、ドライトマト、干しわらび、干し唐辛子なども良い。
高血圧管理・治療ガイドライン2025でも、高血圧症の非薬物治療として果物野菜の摂取が血圧を低下させることが記載されている。
血圧が正常でも危険な人の共通点
湊口氏は、3200人を追跡したデータから、血圧が正常でもカリウム不足の人は脳・心・腎疾患のリスクが3.2倍に上昇することを実証した。カリウム不足は、血圧が正常な人でもこれらの疾患リスクを高めるため、注意が必要だ。果物や野菜を積極的に摂取することで、カリウム不足を解消し、疾患リスクを低減できる。
果物野菜の摂取は心臓病だけでなく、脳卒中や腎臓病の予防にも効果的であり、全死亡リスクを下げることが期待される。日々の食事にカリウム豊富な食材を取り入れ、健康長寿を目指そう。



