大手外資系企業を中心に年間1000件以上の産業医面談を行う武神健之氏が、メンタル不調の初期サインと周囲の適切な対応について解説した。同氏は「ストレス症状は本人が自覚しにくく、特に仕事ができる人や責任感の強い人ほど『自分がメンタル不調になるわけがない』と思い込み、治療が遅れる傾向がある」と指摘する。
ストレス症状の3つのカテゴリー
武神氏によると、ストレス反応は心・身体・行動に現れる。本人が気づきやすいのは不眠、食欲低下、頭痛、めまい、動悸などの身体症状。一方、やる気が出ない、億劫、不安、イライラ、憂鬱といった精神症状は自覚しにくい。周囲が最も気づきやすいのは、飲酒・喫煙の増加、遅刻・早退、会話の減少などの行動や表情の変化だ。
「これらの症状は徐々に進行するため、気づいた時にはかなり進んでいるケースが多い」と武神氏は警鐘を鳴らす。
「仕事ができる人」ほど危険
特に注意が必要なのは、責任感が強く仕事ができるタイプだ。武神氏は「『まさか私が』という思いが先行し、ストレスが原因である可能性を否定してしまう。結果的に治療開始が遅れ、症状が重くなる」と説明する。
また、身体症状がすべてストレス由来とは限らず、肉体的な不調が原因のこともあるため、周囲の観察と適切な声かけが重要だとしている。
同僚への声かけ:最初の一歩
武神氏は、同僚の変化に気づいたら「まずは気になっていることを伝える」ことが大切だと強調する。具体的には「最近どう?何かあった?」など、相手を責めずに心配していることをストレートに伝えるのが効果的だ。
一方で、「病院に行ったほうがいい」という直接的なアドバイスはNG。武神氏は「『病院に行け』と言われると、相手は『自分は病気扱いされた』と感じ、かえって心を閉ざしてしまう」と注意喚起する。
迷ったら同僚に相談
自分だけで対応できない場合は、他の同僚や上司、あるいは産業医に相談することを勧める。武神氏は「周囲の気づきが、早期発見・早期治療の鍵を握る」と述べ、職場全体でメンタルヘルスを支える文化の重要性を説いている。
これらのアドバイスは、同僚の変化に気づいた際の具体的な行動指針として、多くの職場で役立つだろう。



