新年度に頑張ったものの、6月になって息切れする人は少なくない。いわゆる「六月病」と呼ばれる現象だ。産業医の出口氏によると、五月病のケアからこぼれ落ちた人や、不調を抱えたまま無理を続けた人が6月になって相談に訪れるケースが増えるという。
六月病の実態と数字
出口氏が担当するある企業では、6月のメンタル不調の新規相談は4月の3倍に上る。新規の休職者数も4月の2倍になるという。マイナビの調査でも、企業の中途採用担当者の46.1%が「6月は他の月と比べて従業員からのメンタル不調に関する相談が増える」と回答している。
「最初は忙しさや環境変化のせいだと思っていたけれど、6月になっても改善せず、むしろ睡眠障害や意欲低下が強くなるのです」と出口氏は指摘する。さらに6月は梅雨の季節であり、気圧の変化や高湿度、不安定な気温が心身にストレスを与える。環境の変化だけでなく、気候条件も重なって不調につながるという。
なりやすい年代とその理由
では、どんな人が六月病になりやすいのか。出口氏は「環境の変化にさらされた新入社員は手厚くフォローされやすい。それに比べて危ないのは、2年目の社員です」と語る。新入社員は研修や面談で見守られるが、2年目になると周囲の目が離れ、本格的に業務を任されるようになり、新たな環境変化に直面する人も少なくない。
また、出口氏は「新入社員より深刻化しやすいのは40代と50代」と指摘する。中堅社員は周囲から期待され、自分でも頑張りすぎてしまい、不調を訴えにくい傾向がある。さらに、管理職になると部下のケアにも気を遣い、自分の不調を後回しにしがちだ。
具体的な事例:希望部署なのに眠れない
昨年6月に出口氏のもとを訪れた、入社2年目の20代男性のケースがある。有名大学を卒業後、大手企業に新卒入社し、社内のクラブ活動にも積極的で、週末は友人とスポーツを楽しむ、期待の若手だった。しかし、出口氏のもとに来たときは下を向き、表情がなかった。
わけを聞くと、目に涙をため、言葉にすることさえ恥ずかしいという様子で「あの、せっかく、希望の部署に配属されたんですけど……」と話し始めた。1年間の新入社員研修を経て、2年目の春に希望の部署に配属され、順風満帆だった。ところがある夜、日中に交わした上司の「今のままで大丈夫だよ」という言葉が頭に引っかかり、評価されていないのではないかと不安になり、眠れなくなったという。
40代50代の六月病リスク
出口氏は「40代、50代は五月病のケアからこぼれ落ちやすい。新入社員はフォローがあるが、中堅以上は自分で何とかしようとしてしまい、不調が長期化するケースが多い」と警告する。実際、6月の相談件数は4月の3倍だが、その中で40代以上の割合が高いという。
企業側も対策を強化する必要がある。出口氏は「6月にフォローアップ面談を設定する企業が増えているが、それでも相談に来ない人を見逃さない仕組みが重要」と話す。特に、普段から元気そうに見える中堅社員ほど、異変に気づきにくいという。
まとめと対策
六月病は、新年度の疲れが梅雨の気候と重なって表面化する。新入社員だけでなく、2年目、そして40代50代もリスクが高い。睡眠障害や意欲低下が続く場合は、早めに産業医や専門家に相談することが大切だ。企業は6月にメンタルヘルスチェックを強化し、個人もセルフケアを怠らないようにしたい。



