「30代の時に、3回同じ派遣先になった女性と仲良くなりました。1年ほど同棲をしました。結婚を少しは考えましたが、幼少時に、両親がろくでもない別れ方をしたのを見たので、僕には結婚願望がほとんどないんです」――そう語るのは、49歳の戸田正和さん(仮名)。彼は就職氷河期世代の一人として、非正規雇用の日々を送っている。
月収11万円、口座残高209円の現実
戸田さんの主な収入源は、イベント系の日払い仕事だ。土日が現場になることが多く、月収は平均して約11万円。しかし、来月に仕事があるかどうかは不透明で、安定した収入は望めない。銀行口座の残高は取材時点で209円だったが、彼は生活保護を受給していない。その理由について、戸田さんは「無理に仕事を入れなくても、今月いっぱいは余裕で生きられるぐらいのお金があります」と話す。実は2日前にパチンコで10万円を勝ち、手元に現金があるからだ。
就職氷河期世代の結婚観と経済的不安
内閣府の調査によれば、就職氷河期世代では「結婚に積極的でない理由」として「経済力・不安定就労」を挙げる割合が他の世代より高い。戸田さんもその例外ではなく、結婚願望がほとんどないと明かす。幼少期に両親の離別を経験したことも影響しているが、経済的な不安定さが大きな壁となっている。
非正規雇用のレッテルと自己評価の低下
戸田さんの人生は、就職氷河期世代の典型的な一例だ。最初の就職でつまずき、正社員になれなかったために職歴が積めず、自己評価は削られていった。社会は非正規雇用というレッテルを貼り、選択肢は狭まる一方だった。それでも彼は生きることを諦めず、日々を楽しむ意識を持ち続けている。「日払い仕事は一日我慢すれば終わる。そのような一日一日の積み重ねこそが人生だ」と語る。
カラオケボックスで語る、夏への思い
取材は周囲の目を避けるため、カラオケボックスで行われた。取材後、戸田さんは「せっかくなんで歌っていいですか」とリクエストし、TUBEの『夏を抱きしめて』を熱唱した。この曲は1994年に94万枚の大ヒットとなり、彼が高校を卒業するころに流れていた。曲調にどこか聞き覚えがある。就職氷河期世代に、また夏がやってくる。
筆者は、現金日払いの「荷揚げ屋」として30年以上働く64歳男性の事例も取材している。彼は年収500万円を捨て、透析を受けながらもこの仕事を続ける切実な理由があるという。



