子どもの咳、救急受診の判断は「呼吸の様子」で—小児救急医が解説
子どもの咳、救急受診の判断は「呼吸の様子」で

インフルエンザが例年より早く流行の兆しを見せるなか、子どもの咳が気になる家庭も多いのではないでしょうか。子どもの咳はありふれた症状ですが、咳がひどいと「すぐに受診したほうがいい?」と心配になることも。小児救急では、「咳の強さ」だけでなく「呼吸の様子」が重視されることがあります。呼吸の異変は、重い病気や呼吸困難のサインであることもあります。小児救急医はどんなポイントを見ているのか解説します。

なぜ「咳の強さ」だけでは判断できないのか

子どもの咳はよくある症状で、特に夜間に悪化することも少なくありません。そのため、夜でも受診すべきか迷う保護者は多いでしょう。しかし、咳の強さだけで救急受診が必要かどうかを判断することはできません。

ふだんは元気いっぱいな子どもが激しく咳き込み、止まらなくなる様子を見ると、保護者としては夜間でも病院へ連れて行くべきか不安になるものです。しかし、咳が激しいからといって、必ずしも呼吸状態が悪いとは限りません。咳き込んでいるとき以外は元気に遊び、呼吸も落ち着いている子どもは少なくありません。

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子どもの咳の原因は、風邪などの呼吸器感染症だけでなく、喘息やアレルギー、乾燥などさまざまです。風邪が治りかけても気道の炎症が残り、少しの刺激で激しく咳が出ることもあります。咳の強さだけでは重症度は判断できないため、小児救急では機嫌や呼吸の様子を重視します。

呼吸器の病気というと咳を思い浮かべますが、咳が目立たないまま呼吸状態だけが悪化することもあります。同じ感染症でも、咳だけで回復する子もいれば、呼吸困難へ進行する子もいます。小児救急では、呼吸数や胸の動き、顔色、酸素飽和度などを総合的に確認し、重症度を判断します。

小児救急医が見る「危険な呼吸」のサイン

小児救急医が特に注意する代表的な呼吸のサインを紹介します。

呼吸が速くなる「多呼吸」は、呼吸困難の重要なサインです。十分な酸素を取り込めないと、体は呼吸回数を増やして補おうとします。目安としては、乳児では1分間に50回以上、幼児では40回以上、学童では30回以上が多呼吸とされます。発熱でも呼吸数は増えますが、「明らかに普段より速い」と感じる場合は注意が必要です。

息を吸うたびに鎖骨の上やみぞおち、胸骨の上がへこむ状態は「陥没呼吸」と呼ばれます。これは強い力を使って呼吸している状態であり、呼吸困難を示す重要なサインです。さらに悪化すると肋骨の間までへこむようになり、早急な受診が必要になります。

ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴が聞こえる場合は、気道が狭くなっている可能性があります。近くにいるだけで音が聞こえる場合は重症化していることもあり、ほかの呼吸の様子と合わせて注意深く観察しましょう。

子どもに多い「呼吸の異変」の原因

呼吸がおかしいと感じたときに考えられる代表的な病気を紹介します。

喘息では、ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴とともに呼吸が苦しくなります。夜間や早朝に悪化しやすく、風邪をきっかけに発作が起こることもあります。乳幼児では苦しさを言葉で伝えられないため、不機嫌になったり泣き続けたりすることで表現することもあります。

クループ症候群は主に3歳頃までの子どもに多く、犬が吠えるような特徴的な咳がみられます。声がかすれたり、息を吸うときにヒューヒューという音がしたりすることもあります。夜間から明け方にかけて悪化しやすい病気です。

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細気管支炎はウイルス感染によって細い気管支に炎症が起こる病気で、2歳以下の乳幼児に多くみられます。風邪症状のあとにゼーゼー、ヒューヒューという音が出たり、鼻翼呼吸や陥没呼吸がみられたりすることがあります。

こんなときは受診を考えたい

次のような症状がある場合は、夜間・休日であっても救急外来へ相談するなど、当日中の受診を検討しましょう。

  • 呼吸が苦しく横になれない
  • 呼吸がいつもより速い
  • 水分摂取量が普段の半分以下になっている
  • 犬が吠えるような咳をしている
  • 近くにいるだけでゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえる

一方で、咳が激しくても呼吸が落ち着いており、水分も摂れている場合は、加湿や水分補給、上体を少し起こして休ませるなどして様子を見ながら、診療時間内の受診でもよい場合があります。

次のような症状がある場合は、救急車を要請することも含め、速やかに救急受診を考えましょう。

  • 会話や泣くことも苦しそう
  • 鎖骨の上や肋骨の間が大きくへこんでいる
  • 顔色が悪い、口唇が紫色になっている
  • 意識がぼんやりしている

判断に迷う場合は、#8000(子ども医療電話相談)や#7119(救急安心センター)なども活用しましょう。

咳よりも「呼吸の様子」を見ることが大切

子どもの咳はよくある症状ですが、咳の強さだけでは病気の重症度は判断できません。小児救急では、呼吸が速くなっていないか、胸がへこんでいないか、ゼーゼー・ヒューヒューという音がしていないかなど、「呼吸の様子」が重視されます。「いつもより呼吸が苦しそう」「何となく様子がおかしい」と感じたら、咳だけで判断せず、早めに医療機関へ相談・受診しましょう。

子どもの呼吸の異変について、一宮西病院小児科部長の元野憲作先生(日本専門医機構認定 小児科専門医、日本集中治療医学会 集中治療専門医、日本救急医学会 救急科専門医)は次のように話します。

「子どもの咳の多くは、空気の通り道にある異物や分泌物を取り除くための生理的な防御反応です。つまり、診療においては咳を抑えることよりも、咳の背景にある原因を知り、咳の目的を理解することが大切です。ただ、咳があまりに長く続いていたり、咳の様子に不安を感じられたりする場合は、病院を受診されることをお勧めします」

「風邪に伴う咳であれば、通常は風邪が治ってくる頃に咳が多くなり、1~2週間程度で改善すると思います。しかし、アレルギーや気管支喘息、副鼻腔炎など咳が長く続くことで慢性的な病気が診断されることもあります。逆に、突然の発症や特徴的な呼吸音を伴う場合、あるいは呼吸の様式が異常な場合は、気道の異物や窒息、クループなど、重症な病気のサインかも知れません」

「いつもと様子が違う、咳が長く続いている、呼吸が苦しそうなど、保護者が不安を感じられた際には、医療機関の受診をご検討ください」