転出入が盛んで人の入れ替わりが激しい地域では、ゴミ出しなどのルールが守られないことがある。その原因は、引っ越してきた個人がルールを無視しているからではなく、地域全体がルールを軽視する雰囲気にあることを、滋賀大学などの研究グループが明らかにした。
調査の概要と解析結果
滋賀大学経済学部の竹村幸祐教授(社会心理学)らの研究グループは、「地域のルールが形骸化するのは、引っ越しの多い個人がルールを軽く見ているからか、それとも地域全体でルールを軽視する雰囲気によるものか」という問いを立てて研究を開始した。
西日本の408の地域コミュニティーに住む約7300人と、滋賀県野洲川流域の99コミュニティーの3200人を対象にした調査データを解析。引っ越しの回数、住民の協力の度合い、地域の決まりを破った人がいた場合の受け止めなどに関する回答を分析した。なお、これらの調査は別の研究のために実施されたもので、今回の研究のために新たに行われたものではない。
移住者と定住者の差はない
解析の結果、移住者がことさらルールを無視しているわけではなく、移住者と定住者のルールに従う度合いは同じ程度であることが判明した。一方で、人の入れ替わりが少ない地域では移住者も定住者もルールを守る傾向があったのに対し、入れ替わりが激しい地域ほど両者ともルールを軽視し、全体の規範遵守の雰囲気が薄れる傾向が浮き彫りになった。
研究グループは、移住者の多い地域では「移住者はルールを守らない」という固定観念から「他の人はルールを守らないだろう」という住民の不安が高まり、地域全体でルールが形骸化していくと解釈している。コミュニティーでのルール軽視の問題は、頻繁に引っ越す個人のせいではなく、コミュニティー全体の雰囲気によるものといえそうだとしている。
ゴミ出しルールの具体例と対策
地域トラブルにつながりやすいゴミ出しについて、竹村教授は「発泡スチロールは、燃えるゴミの地域とそうでない地域が存在する。『燃えるだろう』と思い込んでゴミ出しして、実は別の分別ルールだった場合、長く住む人から見ればルール違反に見える。でもその人は『ゴミルールを乱してやろう』と思っているわけではなく、ルールを知らないだけ」と解説する。
このようにルールを守っていないように見えるケースが相次ぐと、地域の規範遵守の雰囲気が崩れていく。地域住民の意識に「よそ者」イコール「無法者」とインプットされ、お互いを避けてルールも守られなくなる負のスパイラルに陥るという。これは外国人の生活ルールにも顕著に表れ、文化や生活習慣の違いが排外主義につながり、深刻な対立が生じている地域もある。
竹村教授は「外国に行くと、携帯電話でどこでも通話している人を見かけるが、日本では電車内など公共の場で大きな声で話すのは『マナー違反』とされる。ムッとしても、一呼吸置いて、『置かれてきた状況が違う』と考え、ルールを知らないなら教えてあげる、といった心を持てるといい。オーバーツーリズムの問題も、明示されていないルールによって生じている事柄も多いだろう」とした。
その上で、「日本人でも外国人でも、移住してきた人が『ルールを守らなくてもいいや』と思っているわけではなく、地域に溶け込もうとしている。コミュニケーションを取れるよう、行政側や地元でルールを明示することが重要」と説く。
今後はルールの明文化がどの程度なされ、どのようにコミュニティー作りに役立っているかを調べ、客観的データと住民が望む地域像に関する主観的調査を組み合わせ、移動と居住の関係をさらに考えていきたいとしている。
研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業と総合地球環境学研究所の助成を受けて実施。成果は9月発行の国際学術誌「シティーズ」に掲載され、7月2日に滋賀大学、東京女子大学、京都大学、神戸大学が共同で発表した。



