長い夏休みが終わり、新学期が始まるこの時期。「朝なかなか起きられない」「なんとなくだるそう、顔色が悪い」「学校に行きたがらない」など、子どもの様子がいつもと違うと感じる保護者もいるのではないでしょうか。夏休み中の生活リズムの乱れや暑さによる疲れなどが重なり、体調を崩しやすくなることもあります。
では、夏休み明けの子どもの不調にはどのような原因が考えられるのでしょうか。また、新学期を元気に過ごすために、睡眠や食事などの生活習慣、日頃の免疫ケアでは何を意識すればよいのでしょうか。武井智昭医師に、夏休み明けに起こりやすい不調と家庭でできる体調管理について聞きました。
夏休み明けに子どもが「朝起きられない・だるい」のはなぜ? 3つの原因
夏休み明けに子どもの体調不良を訴えるケースが増えるのは、決して珍しいことではありません。大きく分けると、3つの原因が考えられます。
原因1:夏休み中の「生活リズムの乱れ」
1つ目は「生活リズムの乱れ」です。夏休みは就寝・起床時刻が不規則になりやすく、夜更かしなどが数日から数週間続くと体内時計(サーカディアンリズム)が大きくずれます。昼間の眠気、だるさ、集中力低下、やる気がでないなどの症状を招く代表的な原因です。
原因2:暑さによる疲れが残っている
2つ目は「暑さによる慢性的疲労」です。日本の夏は高温多湿で、近年は最高気温が40℃近くとなり、体は常に放熱のために働いています。食欲が落ちたり、疲れがたまったりして、体調を崩しやすくなる子どもも多いです。
原因3:「学校に行きたくない」には心理的ストレスが隠れていることも
3つ目は「新学期への心理的ストレス」です。環境の変化、友人関係への不安など心の負担が、頭痛・腹痛・倦怠感として現れることがあります。これらは心と体が密接に関わる「身体表現性症状」と呼ばれるもので、本人が無意識のうちに不調を訴えるケースです。
子どもの生活リズムを戻すには? 睡眠・朝食・朝の光がポイント
夜更かしや睡眠不足は、自律神経のバランスを崩します。自律神経は体温調節、血圧、消化、免疫など体の基本機能をコントロールしているため、乱れが続けば風邪をひきやすい、胃腸の調子が悪いといった症状が現れます。食事時間の乱れも、胃腸リズムを乱し、栄養吸収の効率を下げます。新学期に向けて生活リズムを戻す際のポイントは、「一気に戻そうとしない」ことです。改善を急かすと本人のストレスが増し、逆効果になりやすくなります。
まず「就寝時刻」を先に整える方法をおすすめします。朝の起床時刻から動かすと、朝の支度や登校に支障が出やすいからです。就寝時刻を数日かけて30分ずつ早めるようにし、その結果として起床時刻も自然と整っていきます。
また、「朝の光を浴びる」ことは体内時計のリセットに非常に効果的です。朝食を摂る、軽いストレッチをするなど、目覚めの儀式を一緒に行うとよいでしょう。
夏休み最終週の「時差戻し」を意識するだけでも、新学期初日の体調がかなり違います。
生活リズムの乱れは免疫にも影響? 家庭でできる免疫ケア4つ
近年の研究で、生活リズムの乱れが免疫機能の低下に影響することがわかっています。体内時計が崩れると、免疫細胞の動きも不規則になり、炎症反応が起きたり、ウイルスへの抵抗力が落ちたりします。逆に言えば、生活リズムを整えることは、免疫機能を含め、子どもの健康を保つための基本になります。
家庭で無理なく取り入れられる免疫ケアとして、私がおすすめしているのは4つです。
- (1)「朝の光を浴びる+朝食」:体内時計をリセットし、自律神経と免疫を同時に整えます。
- (2)「ぬるめのお風呂(40度前後)に10〜15分つかる」:副交感神経が優位になり、リラックス効果とともに免疫機能や自律神経機能の回復を助けます。熱すぎるお風呂は逆効果になります。
- (3)「家族で食卓を囲む時間を作る」:楽しい食卓は心の安定をもたらし、心理的免疫を高めます。
- (4)「十分な睡眠時間を確保する」:小学生で9〜12時間、中学生で8〜10時間程度が目安です。
すべて「完璧にやろう」とする必要はありません。「できる日から、できる範囲で」が長続きのコツです。
子どもの体調管理の基本「睡眠・食事・運動」、それぞれのポイントは?
では、家庭では具体的に何を意識すればよいのでしょうか。免疫機能を保つために大切なのは、毎日の睡眠・食事・運動など、基本的な生活習慣です。
十分な睡眠をとる
免疫機能を保つうえでまず大切なのは「質の良い睡眠」です。睡眠中は免疫細胞が活性化され、ウイルスや細菌と戦う準備をします。就寝・起床時刻を毎日同じにし、年齢に応じて良質な睡眠を確保してください。
朝食をとり、バランスのよい食事を心がける
次に「腸内環境の整備」です。実は、腸には多くの免疫細胞が存在しており、腸内環境を整えることも健康維持には大切です。発酵食品(ヨーグルト、味噌、納豆など)、食物繊維(野菜、きのこ、海藻類)、そしてオリゴ糖を含む食品を意識して摂ることがおすすめです。
「朝食を必ず摂る」ことも重要です。単なる栄養補給だけでなく、体温を上げ、腸の動きを促し、1日のリズムを作るスイッチとなります。
適度に体を動かす
最後に「適度な運動」です。1日60分程度の身体活動が推奨されています。屋外での遊びは日光浴を兼ねており、ビタミンDの生成にもつながります。暑さが厳しい時期は朝夕の涼しい時間帯を選ぶ、無理をしない範囲で楽しんで体を動かす、という姿勢を大切にしてください。
子どもの体調不良、何日続いたら受診する? 病院へ行く目安
まず、「2週間」が一つの目安だと考えています。不調が2週間以上続く場合は、単なる生活リズムの乱れではない可能性があります。
特に注意していただきたい「受診を検討すべきサイン」は次の通りです。
- 38度以上の発熱が3日以上続く
- 頭痛、腹痛、吐き気が繰り返す
- 急に体重が減った、あるいは食欲が長期的に低下している
- 夜眠れない、朝起きられない状態が2週間以上続く
- 学校に行きたがらない、行けない状態が頻繁にある
- 表情が暗い、涙もろい、以前楽しんでいたことに興味を示さない
「学校に行きたがらない」ということについては、わがままや怠けと決めつけず、心のSOSの可能性があります。
「朝起きられない」が続くときは起立性調節障害の可能性も
近年増加している「起立性調節障害」は、小学校高学年から中学・高校の子どもに多く、朝起きられない、だるさ、立ちくらみ、腹痛・頭痛など様々な症状が存在しており、適切な診断と治療が必要です。
また、「学校に行きたくない」という訴えの背景に学校におけるいじめ・友人関係のトラブルが隠れていることもあり、家庭で穏やかに話を聴く時間を持つことも大切です。
「学校に行きたくない」は心のSOSの場合も
夏休み明けの心理的要因で多いのは「新学期不安」です。新しい環境や友人関係への緊張からくるもので、軽いものであれば2週間程度で落ち着きますが、1カ月以上続く場合や、日を追うごとに悪化している場合は、担任・スクールカウンセラーと連携をとることをご検討ください。
受診時は、「いつから、どのような症状があるか」「生活リズムの変化」「家庭や学校での出来事」をメモしておくと、診察がスムーズに進みます。家庭での対応で迷うことがあれば、一人で抱え込まず、まずはかかりつけの小児科医などへお気軽にご相談ください。早期の相談が、お子さまにとっても保護者にとっても安心感につながります。



