がんになっても、治療を続けながら社会生活を送ることができる時代を迎えている。背景には、治療法の進歩や医療体制の整備がある。もっとも、がんが命を左右する病気であることに変わりはない。国は引き続きがんの医療体制の改善に努めてほしい。
基本法成立から20年、環境改善進む
がん対策基本法が先月、成立から20年となった。かつてがん医療の水準は地域によって差が大きく、適切な治療を受けられずに病院を転々とする患者が多かった。基本法にはそうした状況を改善する狙いがある。
国や自治体に対し、対策の推進を法的に義務づけた結果、患者を取り巻く環境が改善したことは意義深い。全国で拠点病院が拡充され治療体制の整備が進んだ。また、社会的な理解が広がり、仕事と治療の両立は当たり前になった。
治療法の進歩で生存率向上
加えて治療法の選択肢も広がっている。新しいタイプの抗がん剤が次々に登場した。具体的には、がん細胞を狙い撃ちにする「分子標的薬」が何種類も開発されているほか、免疫力を回復させる「免疫チェックポイント阻害薬」も実用化している。複数の薬を併用したり、放射線治療などと組み合わせたりする治療法の開発も進んだ。
その結果、たとえば男性の肺がんの5年生存率は、20年前に25%だったが、35%に向上した。医療の着実な進歩は、患者にとって希望になるだろう。
専門医不足が新たな課題に
一方、治療が高度になったことで新たな課題も目立ってきた。様々な薬を適切に使うには、その特徴や副作用への対応に通じた専門医の役割が重要になる。だが、読売新聞が各都道府県のがん拠点病院を対象に調査したところ、薬物治療の専門医が不足している、との回答は9割近くに上っていた。
専門医が高度な薬物治療を行った場合、診療報酬に加算を付けるなど、人材の確保を国が後押しする対策が必要だろう。手術を担う外科医も、激務のため若手に敬遠され、人手不足が深刻だ。外科医が抗がん剤治療を兼務する場合があり、負担の重さに拍車をかけている。薬物治療を専門医が引き受ければ、こうした問題も改善するのではないか。
地域医療の効率化が急務
専門の医療人材や患者を拠点病院に集約し、地域医療を効率化することは急務だ。高度な知識や経験が必要な薬物治療は専門医のいる病院が担当し、標準的な治療は身近な地域の病院で行うといった工夫も欠かせない。



