海面をすくったネットから、一つのボトルキャップが出てきた。直径わずか3.5センチ。内側は、小石が固まったようなものがぎっしりと詰まり、普通の海洋プラスチックごみとは少し様子が違う。研究者が中を調べると、隙間から多様な生きものが次々と現れた。そこには、多くの命が暮らす小さな世界ができていた。しかも、このキャップは海の上を長く旅してきたらしい。
小さな「城」に命が集まる
名古屋大の自見直人講師(系統分類学)は、令和5年1月4日、高知県南東方の海上にいた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海底広域研究船「かいめい」に乗り、海洋プラスチックごみが生きものにどんな影響を与えるのかを調べるためだ。試料収集のため、海面付近を長く引いたネットを船上へ引き揚げると、漂流ごみの中に、一つのボトルキャップが混ざっていた。内側は小石や粘液のようなもので詰まっている。「何だろう」とのぞき込むと、その隙間から細長い生きものが顔を出した。
生きものが残した手がかり
ボトルキャップのくぼみに作られた小さな生物たちの「城」は、いったい誰が、どうやってつくったのか。どこから、どんな道のりをたどってきたのか。生きものたちが残した手がかりを追うと、ありふれたごみから、思いもよらない海の物語が浮かび上がった。



