【寝業師の仕事術】バーの客の「会社を回るだけでカネになる」という一言で始まった“最後の総会屋”小川薫の仕事術
バーの客の「会社を回るだけでカネになる」の一言から始まった最後の総会屋・小川薫の軌跡

PRESIDENT Onlineに掲載された向谷匡史氏の著書『寝業師の仕事術』(清談社Publico)より、「最後の総会屋」と呼ばれた小川薫のエピソードを紹介する。昭和から平成にかけて、上場企業の株主総会には、進行を妨害するなどして企業から金品を要求する反社会勢力・総会屋が存在していた。

転機はバーの客の一言だった

小川が勤めるバーで、酔った中年客が「俺は会社回りするだけでカネになるんだぜ」と自慢した。「総会屋」という初めて聞く職業だったが、カネに困っていた小川は「どうやればええんですか?」と食いついた。

客は「簡単だ。会社の総務課を訪ねてだな、今後の経営姿勢について話を聞きたい――そう言えばいい。黙ってカネを出す。今日はA印刷に行ってもらってきた」と説明。大手印刷会社の名前を口にした。眉ツバ話だったが、生活は逼迫していた。考えるより早く行動に移すのが小川の特性だった。

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A印刷で受け取った2000円

数日後、小川はA印刷へ。緊張で心臓を高鳴らせながら受付で「今後の経営姿勢について話を聞きにきた」と、客に教わったとおりのセリフを口にした。受付嬢は笑顔を見せ、総務課に行くよう告げた。総務課の若い社員は、挨拶もなく小川の名前を聞くこともなく、慣れた手つきで封筒を手渡すと、領収書へのサインを求め、そそくさと自席に戻っていった。

社を出て封筒を確かめると、2,000円が入っていた。大卒の初任給が2万円前後の時代だ。「こりゃ、ええ商売じゃのう」と小川はうなり、小躍りし、その場で総会屋になる決心をした。

水産大手T漁業で見た「指1本」の意味

バーの客である総会屋からノウハウを聞きかじり、独学で知識を身につけた小川は、攻めやすい企業として総会屋が口にした水産大手のT漁業へ乗り込んだ。受付嬢の笑顔の応対に意を強くして総務課を訪ねると、応対した中年社員が指を1本立てて「これでいいですか」と言った。

(なんじゃ、千円か)――A印刷の半額ではないかと落胆したが、顔を出すだけでカネになる。不満を言ったらバチが当たるだろうと気を取り直すと、「封筒のなかに領収書が入っていますのでサインをお願いします」と告げられた。封筒の中を確かめて驚いた。なんと1万円札が入っていたのである。こんな「おいしい仕事」が世の中にあるとは信じられない思いだった。

後に「最後の総会屋」と呼ばれ、年10数億円を集めるまでになった小川薫の仕事術は、続きで詳しく語られている。

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