保育料無償化が招く予想外の波紋
東京都が2023年度から保育料を実質無償化したことを受け、働く親の急増により保育園の入園競争が再び激化している。このまま推移すれば、2027年には2016年の「保育園落ちた日本死ね」という匿名ブログが社会問題化した当時と同様の待機児童問題が再燃する可能性があると専門家は警鐘を鳴らす。
保育園を考える親の会アドバイザーの普光院亜紀氏は、「無償化によって潜在的な保育需要が顕在化し、特に0歳児クラスと1歳児クラスの競争率が急上昇している。このままでは、かつての保活(保育園探し)の過熱状態が戻ってくる」と指摘する。
待機児童ゼロの実態
近年、「待機児童数ゼロ」を宣言する自治体が増えているが、実際には認可保育園に入園申請をして入れなかった子どもは少なくない。国の定義に基づき、待機児童数から除外できるケースがあるためだ。除外対象には、認可外保育園に入園した子ども、特定の園のみを希望する「特定園希望者」、育児休業中の保護者(延長希望者含む)、求職活動をしていない求職中申請者などが含まれ、自治体によって運用が異なる。
普光院氏は「数字上の待機児童ゼロは、実態を正確に反映していない。無償化でさらに需要が増えれば、隠れた待機児童が急増する恐れがある」と警鐘を鳴らす。
育休延長と入園戦略の難しさ
2025年に育休延長手続きが厳格化されたが、認可保育園に入園できなかった場合は保留通知をハローワークに提出することで育休を延長できる点は変わっていない。ただし、延長後の入園チャンスを見通す必要がある。1歳児クラスはどこも混んでおり、年度途中での入園が難しい園も多い。一方、0歳児クラスは1歳児クラスよりも空き率が高いため、希望する園に空きがあれば育休を切り上げてでも入園する選択肢も有効だが、勤務先の承認が必要だ。
育児休業給付金が出る法定の育休延長は2歳までだが、会社の制度で3歳まで延長できる場合、復職時に預かり保育のある幼稚園も選択肢となる。ただし、預かり保育の時間や実施日は園によって異なり、フルタイム就労に合わない場合もあるため、注意が必要だ。
2027年、保活が10年前に逆戻り?
東京都の保育料無償化は、子育て世帯の経済的負担を軽減する一方で、保育需要を急増させた。2026年時点で既に一部の区では入園倍率が上昇しており、2027年度の入園申し込みはさらに競争が激化すると見られる。普光院氏は「このまま無対策で進めば、2016年のような『保活戦争』が再現される可能性は十分にある」と警告する。
東京都とその他の地域との経済格差が広がる中、保育の無償化が待機児童問題を解決するどころか、新たなひずみを生み出している。自治体は実態に即した待機児童数の把握と、保育施設の拡充、多様な保育サービスの提供など、抜本的な対策が急務となる。



