習近平の偽情報戦略に日本はどう対抗すべきか、ナギ教授が警鐘
習近平の偽情報戦略に日本はどう対抗すべきか

国際基督教大学のスティーブン・R・ナギ教授(政治学・国際関係学)は、中国の習近平国家主席が主導する対日偽情報戦略が世界的に拡散し、日本が「軍事的に不安定な国」という誤った印象を固定化させかねないと警鐘を鳴らす。友好国でさえ、日本のイメージが「富士山」「芸者」「侍」「アニメ」といった文化的要素にとどまり、経済力や民主主義といった全体像が伝わっていない現状を問題視する。

日本のイメージは「楽しい文化の国」だけか

海外で日本が語られる際、昔も今も「富士山」「芸者」「侍」「すし」「アニメ」といった言葉が並ぶ。最近では「ポケモン」「ワンピース」「マリオ」といったキャラクター名も加わった。ナギ教授は「これらの文化は日本が世界に誇るべき財産であり、アニメやゲームをきっかけに日本語を学ぶ若者も多い」と評価する。しかし、それだけが日本の姿だと理解されているなら問題だと指摘する。

日本は世界有数の経済規模を持ち、精密機械、自動車、素材産業、医療機器などで世界を支える。同時に、民主主義と法の支配を基盤に、選挙による政権交代や国際貢献を進めている。だが、その全体像は海外で十分に共有されていない。

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偽情報がもたらす経済・外交への影響

「いまの国際社会では、『どう見られているか』が国の力を左右する」とナギ教授は強調する。企業は信頼できる国に投資し、学生は安定した国を留学先に選び、観光客は安心できる場所を訪れる。国のイメージは雇用や生活、将来の選択肢に直結する。もし日本が「軍事的に不安定な国」「過去と向き合っていない国」といった印象で語られれば、外交や経済に大きな損失をもたらす。そして、その印象が事実とは異なる偽情報によって形作られているなら、なおさら深刻だ。

習近平率いる中国は偽情報の発信に極めて長けており、国家戦略として日本に関して意図的に事実を歪めた情報を発信し続けている。ナギ教授は「偽情報を世界中にまき散らす作戦が功を奏していることに、習近平はほくそ笑んでいるに違いない」と述べる。

日本研究の偏りと中国研究の戦略性

2026年、カナダのアルバータ大学中国研究所は「How China Sees the World」という報告書を発表した。そこでは、中国の人々がどの国を脅威と感じ、どの国を信頼しているかが世論調査データをもとに分析されている。日本は安全保障上の懸念対象の一つとして認識されていることが示された。同研究所は中国の軍事予算増加、南シナ海政策、台湾海峡問題、一帯一路構想などを横断的に研究し、「中国という国家がいま何を考え、どこへ向かおうとしているのか」を分析している。その結果、現地での中国シンパが増えている。

一方、日本研究はどうか。多くの大学では、マンガ、アニメ、ゲーム文化、日本映画、ファッション、ジェンダー研究が中心だ。ボーイズラブ研究、日本の性表象、アイドル文化、町家建築、弁当文化、キャラクタービジネス分析など、細分化されたテーマが人気である。ナギ教授は「これらは決して軽視すべきではないが、日本の防衛政策、経済安全保障戦略、財政問題、エネルギー政策、少子高齢化対策などを体系的に扱う授業は限られている」と指摘する。

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日本の全体像が届かない構造的問題

ナギ教授は、日本の対外発信の弱さが偽情報の拡散を許す一因だと分析する。日本の現実、例えば民主主義の安定性や法の支配、国際貢献の実績などが十分に発信されていないため、中国の偽情報が「日本は危険」という印象を固定化しやすくなっている。必要なのは、丁寧で迅速な対外発信と、海外の大学で日本に関する講義を増やすことだと提言する。

「誤った印象が蓄積されると、それが『事実』として固定化される」とナギ教授は警告する。その結果、日本の外交や経済に深刻な影響が及ぶ可能性がある。