7月1日、『週刊文春』が報じた俳優・佐藤二朗と橋本愛のトラブルが波紋を広げている。フジテレビ系ドラマ「夫婦別姓刑事」の撮影中に、佐藤が橋本に対して問題行為を行ったとされ、同局は親会社フジメディアホールディングス(FMH)の「人権方針」に沿った声明を発表した。しかし、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「声明を読み解くと、組織防衛に終始し、被害者を守る姿勢が見えない」と指摘する。
「人権方針」の実態と声明の矛盾
FMHの「人権方針」は「差別・ハラスメントの禁止」「適正な労働環境の確保」「メディアグループとしての人権尊重」を優先課題に掲げる。しかし、フジテレビの声明では「ハラスメント」という言葉は一切使われず、「心理的安全性の保たれた制作現場づくり」「人権の尊重を含むサステナビリティ課題」といった抽象的な表現に留まった。鈴木准教授は「方針があるにもかかわらず、具体的な事実や対策が示されていない。これでは『二次被害の防止』を盾に、問題を曖昧にしているに過ぎない」と批判する。
昨年の「フジテレビ問題」との共通点
FMHが人権方針を策定した背景には、2025年1月に発覚した「一連の事案」がある。同年7月6日、フジテレビは「検証 フジテレビ問題 反省と再生・改革」と題した番組を放送し、コンプライアンス違反を認めた。鈴木准教授は「あの時も、組織としての反省や具体策が乏しく、今回の声明も同様のパターンだ。『人権尊重』を掲げながら、実際は会社と社員を守ることに終始している」と指摘する。
「女性俳優」表記が示す問題
声明で「女性俳優」という表現が使われたことにも疑問の声が上がる。鈴木准教授は「『女性』とわざわざ指定することで、無意識のバイアスやジェンダー問題をはらんでいる。また、結果的に佐藤二朗も橋本愛も守られていない。佐藤には事実確認の機会が十分に与えられず、橋本には具体的な保護措置が示されていない」と語る。
組織防衛ではなく説明責任を
フジテレビは「適切な環境調整や関係者への配慮・保護に努めてまいりました」と述べるが、具体的な内容は明かされていない。鈴木准教授は「フジテレビ自体が『被害者』ではない。むしろ、問題が起きた現場を抱える加害者的立場だ。にもかかわらず、声明は組織防衛の色が強く、視聴者や被害者に対する説明責任を果たしていない」と強調する。昨年の「フジテレビ問題」の検証番組でも、元社長主導の「性別・年齢・容姿に着目した会合」の存在が明らかになったが、根本的な改革には至っていない。
今後の課題と視聴者の反応
今回の騒動は、メディア企業の人権方針が形骸化している実態を浮き彫りにした。SNS上では「フジテレビの声明は責任逃れ」「解体しかない」といった厳しい声が相次ぐ。鈴木准教授は「真の改革には、第三者による調査の実施や、被害者支援の具体策の公表が必要だ。『人権方針』は単なる飾りではなく、実効性を持たせるべきだ」と訴える。



