最大震度7を観測した熊本地震の被災地で、デジタル技術の活用が進んでいる。支援情報を迅速に伝えるデジタルサイネージや、家屋被害調査を効率化するタブレット端末の利用が広がり、デジタル庁も官民連携のチームを初めて派遣した。
避難所に大型画面、最新情報を即時配信
震度7を観測した熊本県宇城市の避難所「松橋西防災拠点センター」には8日、65インチの大型画面が設置された。紙やホワイトボードに代わるデジタルサイネージ(電子看板)で、市職員のパソコンからインターネット経由で情報を配信できる。
給水や入浴などの支援情報に加え、災害ごみの搬入場所の変更や、みなし仮設住宅の入居申請開始日などの最新情報が即座に伝えられる。断水した自宅で過ごし、避難所で情報収集しているという59歳の女性は「スマートフォンの扱いも苦手なので、一目で大事な情報が分かって助かる」と話す。
今回の地震では県内で最大4万8530戸が停電し、電話やデータ通信が不安定な状態が数日続いた。被災自治体は当初、チラシやホワイトボードで情報発信していたが、復旧後はデジタル技術の活用が進んでいる。
無償貸し出しで20台以上稼働
デジタルサイネージは情報通信会社「NTTドコモビジネス」(本社・東京)が無償で貸し出し、宇城市や八代市、氷川町の避難所で20台以上が稼働を始めた。同社は2024年の能登半島地震を機に貸し出しを開始し、電子機器に不慣れな高齢者らから「日々更新される情報がまとめて確認できる」と好評だった。
宇城市広報統計課の小野田幸一郎課長は「緊急時の情報は翌日に変更になることもある。混乱を避けるためにも最新情報を届けることは重要だ」と感謝する。
タブレットで被害調査、1件5分に短縮
被災状況の調査でもデジタル技術が活用されている。八代市や氷川町では住宅被害の調査にタブレット端末を使用し、被災家屋の所在地や屋根、天井、壁などの損壊状況を入力・撮影すると、市役所や町役場で即時に倒壊程度を把握できる。端末を使えば最短1件5分で作業が終わるという。
宇城市では市職員が電子申請システムで被災状況を入力し、情報を共有。若手職員は生成AI「チャットGPT」を活用してり災証明書の申請手続きのチラシを作成し、本来3時間程度かかる作業を30分で完了。余った時間を別の業務に充てたという。
市の職員数は10年前に比べて1割減ったといい、市防災消防課の村上正明課長は「デジタル技術を駆使することで業務速度は上がっている実感がある」と話す。
能登半島地震で注目、官民チーム派遣
災害時のデジタル技術活用が特に注目されたのは能登半島地震だ。避難所の変更や車中泊など移動する被災者の居場所確認について石川県から相談を受けたデジタル庁などは、交通系ICカードを活用した把握システムを構築。被災者にカードを配布し、避難所などでカードリーダーにかざすことで、情報登録や避難所の利用実態把握に役立てた。
デジタル庁は今回の地震翌日の7月29日、官民連携による災害派遣デジタル支援チーム(D―CERT)を被災地に初めて派遣し、被災自治体からニーズを聞き取っている。同庁の担当者は「被災地の復興を中長期的な視点で支えられるデジタル支援の手法を模索している。地元の被災自治体の要望に応えられる必要な支援をしたい」としている。



