最低賃金1176円、年収の壁への影響は?働き方の見取り図
最低賃金1176円、年収の壁への影響と働き方の見取り図

2026年の最低賃金は全国平均で1176円となる見込みだ。前年から55円の引き上げで、上昇ペースは鈍化したものの、高水準が続く。この引き上げが、働き手と企業にどのような影響を及ぼすのか。楽観的な未来と悲観的な未来の両方を、労働市場のデータから考察する。

最低賃金の上昇がもたらす好循環

最低賃金の上昇に見合う形で職場の生産性が向上すれば、社会の楽観的な未来像が見えてくる。賃金水準が底上げされれば、働き手はやりがいを持って仕事に取り組み、増えた収入に見合うパフォーマンスを発揮しようと努めることが期待される。

その場合、企業は人件費の増加を上回る利益を生み出そうとする。業務体制の見直しや商品・サービスの付加価値向上、新規事業の立ち上げなどが推進され、企業全体の生産性が向上すれば、求人を増やすことにつながる。求人が増えれば働き手にとって就職先の選択肢が広がり、より働きやすい職場を選べるようになる。好循環へとつながっていく。

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悲観的な未来への懸念

一方で、最低賃金の上昇で企業の経営体力が持たなくなった場合、人件費の削減を余儀なくされ、生産性の維持が難しくなる可能性がある。労働市場では求人数が減少し、仕事に就けなくなる人の数が増えていく。失業率が上昇すると、世帯収入が減ってお金が消費に回らなくなる。結果、生産と消費の好循環が悪化して経済が縮小してしまう。こうなると、見えてくるのは社会の悲観的な未来像だ。

労働政策研究・研修機構が公開するデータから最低賃金の上昇ペースを算出すると、前年比で2021年は3.1%増、2022年は3.3%増、2023年は4.5%増、2024年は5.1%増、2025年は6.3%増となっている。ここ5年は、ずっとハイペースな右上がりを示してきた。

雇用データに見る「不穏な動向」

総務省の労働力調査によると、完全失業率は2021年から2025年にかけてジワジワと低下してきた。今のところ、仕事に就くことができない人の数は少なく抑えられ、安定を保つことができているようだ。

それに対し、厚生労働省の一般職業紹介状況から、求職者1人につき何件の求人があるかを示す有効求人倍率を確認すると、2021年から2023年にかけては上昇していたものの、2024年、2025年と連続して減少に転じている。さらに、2026年も2025年を下回るペースで推移しており、現在も求職者1人当たりの求人件数は減少傾向が続いている。

有効求人倍率は、景気の動向や求職者の就業意欲など、さまざまな要素から影響を受ける。最低賃金もその一つだ。ギリギリの金額でなんとか雇用できていた企業だと、最低賃金が引き上げられるほど求人が出しづらくなってしまう。

引き上げは続くが、ペースにブレーキ

前述のとおり、2026年の最低賃金は引き上げ目安が全国平均55円となった。前年比4.9%の上昇ということになる。2025年の上昇率は同6.3%だったのでペースは落ちた。依然高い水準で引き上げつつも、雇用への影響に配慮した水準とも受け取れる。上昇ペースにはややブレーキがかかり始めたと見ることもできる。

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