「災害が起きた時のために、オフィスに水と食料は用意した」――過去の災害を教訓に、防災用品の備蓄を進める企業は多い。しかし、大地震が起きて担当者が出社できないとき、誰がオフィスを開け、何を、どの順番で配るのか。停電したらどのように保管場所に向かうのか。そして、簡易トイレの使い方は誰が教えるのか。そこまで準備できている企業は、どれほどあるだろうか。
企業防災というと防災用品の購入が思い浮かぶが、それらを買っただけでは機能しない。総務には物資を管理することに加え、災害時に人が動ける状態をつくることが求められている。
今回は防災用品の管理から社外との連絡、経営層への働きかけまで、総務が取り組むべき防災対策について詳しく説明したい。
備蓄品は「買って満足」では企業防災は成立しない
東日本大震災で多くの帰宅困難者が発生したことを受け、東京都は2013年に「東京都帰宅困難者対策条例」を施行した。大規模災害時に人々が一斉に帰宅することによる混乱や事故を防ぐためのもので、都内の事業者には、従業員が施設内で待機できるよう、3日分の飲料水や食料などの備蓄を求めている。
地域や企業によって必要な備えは異なるが、水と食料に加え、簡易トイレ、毛布、トイレットペーパーなどの衛生用品、非常用電源、救急用品なども用意しておきたい。また、食物アレルギーや持病など、個別の配慮も欠かせない。
総務としては、こうした防災用品の数量、保管場所、使用期限、担当者を台帳で管理し、定期的に点検することはもちろん、期限が近づいた備蓄品を交換するだけで終わらせない工夫が必要だ。
「使う、気付く、補充する」循環で常に使える状態を保つ
今回筆者に情報を寄せてくれた企業では、期限の近い防災用品を有効活用しているという。例えば、長期保存水は社員に配り、非常食は実際に調理してランチ時に社員に提供している。
これは廃棄を減らすことに加え、非常食の袋の開け方、必要なお湯や水の量、調理時間、味、配布にかかる手間などを確かめる訓練にもなる。社員にとっても、非常食を実際に食べる経験が、防災を自分事として考えるきっかけとなる。
このように、防災用品の管理においては「使う、気付く、補充する」という循環を回し、いつでも使える状態を保つことが重要だ。
また、保管場所と配布方法にも気を配る必要がある。購入した非常食を段ボールに入れっぱなしにしたままオフィスの隅に積み上げるだけでは、停電や家財の転倒によって取り出せなくなる恐れがある。1カ所に集中させず、避難経路や消火設備を妨げない場所を選び、フロアごとに分散して保管するなどの工夫が必要だ。
保管場所の分散と、担当者不在でも開封・配布できる体制づくり
さらに、一人分ずつ小分けにし、箱の外側に内容物と配布手順を記すことや、総務担当者が不在でもほかの社員が開封・配布できる体制を整えたい。特に、出社とリモートワークの社員がいるハイブリッドワークの環境下では、日によって出社人数が変わる。想定される最大出社人数や来客者数を踏まえて、必要な備蓄量を見直すことも忘れずにいたい。