静岡工区着工へ、しかし開業は遠い
JR東海のリニア中央新幹線計画で、最後の未着工区だった南アルプストンネルの静岡工区(8.9キロ)がようやく着工のめどが立った。静岡県の鈴木康友知事は7月7日の県議会全員協議会で、JR東海と自然環境保全協定を結ぶ方針を表明。河川法の手続きも進めることで合意し、法的な障害はほぼクリアされた。
しかし、ジャーナリストの小林一哉氏は「南アルプスを貫通するトンネル工事は未曽有の難工事であり、JR東海が公表する工期は非現実的」と指摘する。リニア開業の時期は、JR東海が目標とする2036年より大幅に遅れ、早くても2042年になるとの試算を示した。
南アルプストンネル、史上最難関の工事
南アルプストンネルは総延長25キロで、山梨工区7.7キロ、静岡工区8.9キロ、長野工区8.4キロからなる。山梨と長野の両工区では既に本体工事が進んでいるが、静岡工区はこれから着手する。
このトンネル区間は大断層や大土被り(地表からトンネルまでの高さが250メートル以上)が続き、最大土被りは1400メートルに達する。技術的に極めて困難で、日本トンネル史上、未曾有の難工事とされている。
山梨工区の実績から見る工期の現実
小林氏は、既に工事中の山梨工区の実績を基に試算。山梨工区では、9年半でトンネル掘削進捗率が43%にとどまっているという。このペースを静岡工区に当てはめると、同区間の完了には20年以上かかる計算になる。
「どんなに早くても2042年までかかる」と小林氏は断言。JR東海が掲げる「2036年開業視野」というニュースの根拠は薄弱だと批判する。
工事現場へのアクセスも困難
南アルプス工事現場までの道路は険しく、度重なる災害で道路が損傷している。資材や人員の搬入に支障をきたす可能性が高く、工事の遅延要因となる。
さらに、工事費の膨張も懸念される。リニア中央新幹線の総事業費は約9兆円と見積もられているが、静岡工区の難工事でさらに増加する可能性がある。
「静岡が遅らせている」シナリオの誤り
一部のメディアは「静岡県が着工を遅らせている」と報じるが、小林氏は「静岡工区の難工事こそが開業遅延の本質」と指摘。仮に静岡が早期に着工を認めていたとしても、技術的な困難さから開業は大幅に遅れていただろうと述べている。
鈴木知事は「これからが本番」と述べ、工事の難しさを示唆した。JR東海は年内の着工を目指すが、現実的な開業時期は不透明だ。



