アーダーン元NZ首相、強権政治に「共感の力」で挑む 自伝で訴え
アーダーン元NZ首相、強権政治に「共感の力」で挑む

世界各地で戦争やテロが続くなか、強権的なリーダーが台頭している。ニュージーランド元首相のジャシンダ・アーダーン氏(46)は、今こそ思いやりを持って共感を大事にする優しいリーダーが必要だと訴える。その思いを聞いた。

「異なる類いの権力」とは何か

自伝のタイトルにもなった「異なる類いの権力」について、アーダーン氏は政治家になった時から「共感や思いやりを大切にしている政治家が、人々の信頼を得ることはできるのか」と考えていたと語る。「それは可能だと示すのが『異なる類いの権力』です」と説明する。

現在、権威主義的で共感を弱さとみなし、同情は失敗につながると考えるリーダーシップのスタイルが増えているという。アーダーン氏は「私はそれらに疑問を投げかけたかったのです」と述べた。

政治現場での共感と思いやり

実際の政治現場での共感や思いやりについて、アーダーン氏は「私は人々に奉仕するためにいる」という価値観を明確にすることが第一だと指摘。自分に投票した人だけでなく、全ての人々に奉仕するために政治家は存在するとし、単なる政治任期の中で考えるのではなく、長期的な問題の解決が求められると述べた。

そのためには合意形成への努力も欠かせないとし、「私は他者に奉仕するためにいるので、対立相手への個人攻撃はしないと誓いました。それは、私が信じる政治ではないからです」と語った。

危機の時代に「近い」リーダーが必要

危機の時代には、人々により「近い」リーダーが特に重要だとアーダーン氏は考える。ニュージーランドではイスラム教礼拝所でのテロ攻撃、火山噴火、新型コロナを経験した。リーダーはそうした危機に対しても「近さ」がなければ、人々が何を求めているのかを完全に理解することはできないという。

また、共感は行動につながる。思いやりを突き詰めると、人々に感情移入するだけでは不十分で、同じことが二度と起こらないようにしたいと考えるためだ。礼拝所がテロ攻撃された際には、すべての被害者を確実にケアすると同時に、銃規制の強化やテロリストを過激化させたソーシャルメディアへの対応策も求めた。「人々が二度とこのような恐ろしい経験をしないように、すぐに行動したのです」と振り返る。

政治制度への信頼低下と強権的政治家

強権的な政治家の台頭について、アーダーン氏は「多くの強権的な政治家が当選しているため、それが人々の求めているものだと信じる傾向がありますが、私は同意しません」と述べる。投票率は下がり、政治制度への信頼も低下している現状を指摘し、「人々は現在の政治に満足していない。だから、異なる政治モデルを考える価値があるのです」と語った。

最もよく観察している欧米の民主主義国では、人々は変化を求め、人生に不満を抱え、物事を解決してほしいと思っている。しかし、それらの問題はいま目にしているリーダーシップのスタイルでは必ずしも解決されないとアーダーン氏はみる。過去のデータを鑑みると、政治が人々の経済的な不安定さに対処できるようになるまでは、政治への不信と低い投票率が続くとの見方を示す。「これまでとは違う政治が求められているのですが、変化がなく、問題が固定化しています」と話した。